概要
解肌発表（かいきはっぴょう）とは、体表に停滞した外邪（風邪など）を散じ、肌表の気機を開通させる治法である。 主に外感表証（風寒・風熱・風湿）による発熱・悪寒・頭痛・鼻咽喉症状に用いられる。 肌表の衛気の流れを整え、邪を発散させることにより、正気の防御機能を回復させるのが目的である。
解肌発表法は、邪を表に発散させ、風邪の初期症状を軽減・予防することに重きを置く。 その適応は、表証の寒熱・頭痛・悪寒・発熱・鼻閉・咳嗽など、外感初期の軽症病態に多く用いられる。
主な適応症状
- 悪寒・発熱・頭痛・身痛・項背強
- 鼻閉・流涕・咳嗽・咽喉痛
- 汗出にくい・四肢冷感
- 舌苔薄白・脈浮緊または浮数
- 風邪初期の軽症感冒・風湿表証
これらは、外邪（風寒・風熱）が肌表に停滞し、衛気の運行が阻滞することで発生する。 解肌発表法では、邪を散じ、肌表の気血の通調を回復することにより症状を軽減する。
主な病機
- 外感風寒 → 衛気閉塞 → 悪寒・発熱・頭痛。
- 外感風熱 → 衛気上逆 → 咽喉痛・発熱・口渇。
- 風湿侵表 → 肌表不和 → 肢体重だるさ・関節疼痛。
- 衛気虚弱 → 邪の侵入を受けやすい → 表証持続。
解肌発表法は、邪の性質（寒・熱・湿）に応じて表の通調を行い、邪を発散させることが治療の中心である。
主な配合法
- 解肌発表＋辛温解表：風寒表証（例：桂枝湯・麻黄湯）。
- 解肌発表＋辛涼解表：風熱表証（例：銀翹散・葛根湯加桔梗）。
- 解肌発表＋祛湿：風湿表証、関節痛・肢体重だるさ（例：薏苡仁湯）。
- 解肌発表＋益気：衛気虚弱で表邪に侵されやすい場合（例：補中益気湯＋解表薬）。
- 解肌発表＋清熱解毒：風熱毒邪による咽喉痛・発疹（例：銀翹散＋黄連解毒湯）。
代表的な方剤
- 麻黄湯（まおうとう）：辛温解表・散寒発汗。風寒表証・無汗の初期感冒に用いる。
- 桂枝湯（けいしとう）：辛温解表・調和营衛。風寒表証・軽症感冒や頭痛・肩背痛に適す。
- 銀翹散（ぎんぎょうさん）：辛涼解表・清熱解毒。風熱表証・咽喉痛・発熱・頭痛に用いる。
- 葛根湯（かっこんとう）：辛温解表・発汗解肌。風寒表証・肩背強・悪寒・発熱に適す。
- 薏苡仁湯（よくいにんとう）：祛風除湿・解表。風湿表証による肢体重だるさ・関節痛に応用。
臨床でのポイント
- 解肌発表は、表証初期・軽症感冒・風邪の初期に用いる。
- 寒邪か熱邪か、また汗の有無を確認して方剤選択を行う。
- 風湿型では、関節や筋肉の重だるさ・痺れも評価し祛湿薬を併用する。
- 衛気虚弱の場合は、益気薬を加え、邪の排出と体力回復を両立させる。
- 発汗・鼻咽喉症状・頭痛などの軽快を観察し、過度の発散は避ける。
まとめ
解肌発表法は、外邪が肌表に侵入した表証初期において、邪を発散させ衛気の通調を回復する治法である。 代表方剤は麻黄湯・桂枝湯・銀翹散・葛根湯・薏苡仁湯などで、 風寒・風熱・風湿による初期感冒・頭痛・咽喉痛・関節痛に広く応用される。 臨床上は、邪の性質・表証の有無・汗の状態を確認し、過不足なく発散させることが要点である。
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