啓脾湯(けいひとう)

📘 基本情報

項目内容
方剤名啓脾湯(けいひとう)
出典『万病回春』
分類補気健脾剤消食導滞剤
保険適用エキス製剤啓脾湯(ツムラ84、クラシエ84など)
構成生薬人参・白朮・茯苓・山薬・陳皮・甘草・蓮肉・山査子・神麹・麦芽


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能健脾益気消食和胃
主治脾胃虚弱による食欲不振、消化不良、腹満、下痢、倦怠感、顔色不良。
特に小児の体力不足・発育不良・慢性下痢に適す。
病機脾気虚により飲食物を運化できず、湿濁が生じて気滞し、消化不良・腹満・下痢などを呈する。
本方は補気健脾の「四君子湯」を基礎に、消食薬を加えて「虚」と「滞」を同時に治す。


🌡 臨床的特徴

観点内容
典型的症状 ・食欲がなく、すぐお腹が張る
・軟便・下痢を繰り返す
・食後に眠くなる・倦怠感が強い
・顔色が淡白または萎黄
・痩せ型で虚弱、発育が遅い(小児)
体質傾向脾気虚体質(疲れやすい・冷えやすい・胃腸が弱い)
舌診淡白、歯痕舌、苔は白または薄白。
脈診虚・緩・弱。


💊 構成生薬と作用(詳細)

生薬主要作用
人参大補元気、健脾益気、強壮。
白朮健脾燥湿、助運化、水分代謝を調える。
茯苓健脾滲湿、利水安神。
山薬補脾養胃、益腎固精。気陰両補の性質。
蓮肉(蓮子)健脾止瀉、益腎安神。慢性下痢を防ぐ。
陳皮理気健脾、燥湿化痰。滞りを除く。
山査子消食化積、特に肉類の消化を促進。
神麹助消化・導滞、特に穀類や澱粉の消化促進。
麦芽健胃消食、特に穀物・乳類の消化促進。
甘草補中益気、調和諸薬。


🩺 現代医学的な理解

  • 胃腸運動の調整:人参・白朮・陳皮が胃の運動を整え、消化吸収を改善。
  • 消化酵素の分泌促進:神麹・麦芽・山査子が消化酵素の働きを高める。
  • 腸内環境の改善:茯苓・蓮肉が腸の水分バランスを整え、下痢を防ぐ。
  • 免疫・代謝向上:人参・山薬の補気作用が全身のエネルギー代謝を改善。


⚠️ 使用上の注意

  • 実証や熱証(口渇・便秘・食べ過ぎによる腹満)には不適。
  • 油っこいものをよく食べて胃もたれするタイプでは「平胃散」「香砂平胃散」が適する。
  • 甘味成分が多いため糖尿病には慎重投与。


💬 臨床応用例

  • 小児の食欲不振・偏食・発育不良。
  • 虚弱体質・慢性下痢・軟便・ガス腹。
  • 胃腸虚弱に伴う貧血・倦怠感。
  • 胃腸が弱く、少し食べるとすぐお腹が張る人。
  • 病後・術後・慢性疾患の回復期の栄養不良。


🌱 類方鑑別

方剤名鑑別点
六君子湯胃のつかえ・嘔気・食欲不振が強い場合。
補中益気湯倦怠感・脱力感が強く、下痢よりも全身疲労が中心の場合。
香砂六君子湯胃もたれや腹部膨満感がより顕著な場合。
参苓白朮散下痢や水様便が長く続く場合。啓脾湯より湿重傾向。


📖 メモ(臨床的要点)

  • 「食べない・太らない・疲れやすい」小児や虚弱者に最適。
  • 「四君子湯」+「消食薬群」の組み合わせで、虚弱と滞積を同時に治す。
  • 現代では、胃腸が弱く食が細い人の「滋養強壮薬」としても使われる。
  • 慢性病の回復期・高齢者の体力低下にも応用できる。
  • 消化器系の虚弱が長引くとき、まず思い出すべき方剤のひとつ。

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