風湿とは

風湿(ふうしつ)とは、外界の風邪(ふうじゃ)と湿邪(しつじゃ)が同時に体内へ侵入し、気血の流れや経絡の通りを阻害する状態を指します。
風は「移動しやすく変化しやすい」性質を、湿は「重く粘り、停滞しやすい」性質を持ちます。そのため、風湿が体に侵入すると、関節・筋肉の痛みや重だるさ、動きの制限などが現れます。主に「風湿痺証」として現れ、関節リウマチや慢性関節痛などに対応します。


原因

  • 外感の風湿邪: 湿気の多い気候や環境で、風邪と湿邪が体表から侵入する。
  • 長時間の湿地滞在: 雨天・梅雨・湿地での生活により、湿が体に入りやすくなる。
  • 発汗後の露風: 汗孔が開いた状態で風湿に当たると、邪気が侵入しやすくなる。
  • 脾虚・気虚体質: 水湿の運化が低下し、外湿が侵入しやすく、内湿も滞る。

病理機転

  • 外から風湿邪が侵入 → 経絡に停滞 → 気血の運行が阻害される。
  • 風の性質により痛みが遊走し、部位や強さが変化する。
  • 湿の性質により重だるさ・関節腫脹・動作不利が起こる。
  • 長期にわたると、湿が熱化して「湿熱痺」や「痰瘀互結」に発展することもある。

主な症状

  • 関節や筋肉の痛み・重だるさ。
  • 関節の腫れや屈伸の不利。
  • 痛みの部位や程度が日によって変化する(風性の特徴)。
  • 身体の重感・疲れやすい・倦怠感。
  • 天候や湿度の変化で悪化しやすい。
  • 舌は淡胖で白膩苔、脈は濡または浮滑。

舌・脈の所見

  • 舌: 淡胖、白膩苔。
  • 脈: 濡または浮滑。

風湿のタイプと特徴

  • 風湿痺: 風湿が関節・筋肉に滞る。遊走性の痛み・関節重だるさ。
  • 風湿上攻: 風湿が上半身に侵入。頭重・項背のこわばり・関節痛。
  • 風湿着痺: 湿が強く、関節の腫脹・重痛・屈伸不利が著しい。

代表的な方剤

  • 羌活勝湿湯(きょうかつしょうしつとう): 風湿の初期、上半身の痛みに。
  • 独活寄生湯(どっかつきせいとう): 風湿痺で虚弱体質の慢性関節痛に。
  • 防己黄耆湯(ぼういおうぎとう): 風湿による浮腫・関節痛・倦怠感に。
  • 薏苡仁湯(よくいにんとう): 湿の停滞による関節重痛・下肢のだるさに。
  • 加味二妙散(かみにみょうさん): 湿が熱化し、関節腫脹・熱痛を伴う場合。

治法

  • 祛風除湿 風邪と湿邪を取り除く。
  • 通絡止痛 経絡を通じさせて痛みを止める。
  • 健脾化湿 脾の機能を整えて湿の生成を防ぐ。
  • 温経散寒 寒を伴う場合は経絡を温めて痛みを軽減する。

養生の考え方

  • 湿気の多い場所や長時間の雨天外出を避ける。
  • 発汗後は体をよく拭き、冷風を避ける。
  • 冷たい飲食を控え、脾胃を守る。
  • 軽い運動や入浴で血行を促進し、湿の停滞を防ぐ。
  • 天候に応じて衣服を調整し、風湿の侵入を予防する。

まとめ

風湿とは、外界の風邪と湿邪が共同して体内に侵入し、経絡や関節の気血を阻む状態です。
主症状は関節痛・重だるさ・痛みの移動性などで、脾虚体質や湿気の多い環境で起こりやすいです。
治療は祛風除湿通絡止痛健脾化湿を基本とし、生活では湿冷を避け、温養と運動で予防することが重要です。

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