当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)

📘 基本情報

項目内容
方剤名当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
出典『傷寒論』
分類温経散寒剤(おんけいさんかんざい)
保険適用エキス製剤当帰四逆加呉茱萸生姜湯(ツムラ38、クラシエ38など)
構成生薬当帰・芍薬・桂枝・細辛・木通・大棗・甘草・呉茱萸・生姜


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能温経散寒養血通脈(冷えにより滞った血流を温め通す)
主治手足の冷え、下腹部痛、月経痛、頭痛、冷え性、四肢厥冷など。
特に「血虚+寒邪」による冷え。
病機寒邪が内に入り、血行が阻滞し、経脈が通じず、四肢末端が冷える。
さらに血虚が加わることで温養の力が不足。
現代的適応冷え性、末端冷感、月経痛、月経不順、頭痛、肩こり、レイノー現象など


🌡 臨床的特徴

観点内容
使用目標(証)四肢(特に手足指先)の冷えが強く、温めても改善しにくい。
血虚により顔色が悪く、疲労しやすい。
体質傾向虚証~中間証。冷え性、貧血傾向、末端の血行不良。
舌診淡白で湿潤、舌苔は白く薄い。
脈診沈・細、または弱。


💊 構成生薬と作用

生薬名主要作用
当帰(とうき)補血活血、温経止痛。血を養い、血行を促進。
芍薬(しゃくやく)養血柔肝、緩急止痛。血虚を補い、筋の緊張を和らげる。
桂枝(けいし)温通経脈、助陽化気。体を内側から温める。
細辛(さいしん)温中散寒、通竅止痛。寒邪を除き、痛みを緩和。
木通(もくつう)通経下乳、利水滲湿。血行と水分代謝を促進。
大棗(たいそう)・甘草(かんぞう)補中和中、調和諸薬。胃腸を守り薬性を和らげる。
呉茱萸(ごしゅゆ)温中散寒、降逆止嘔。強力に寒を除き、冷えを改善。
生姜(しょうきょう)温中散寒、助陽解表。全体の温める力を高める。


🩺 現代医学的な理解

  • 末梢血流改善作用(血管拡張・血流促進)
  • 体温上昇作用(代謝促進)
  • 鎮痛作用(月経痛・頭痛・神経痛の緩和)
  • 自律神経調整作用(冷え性・のぼせの改善)
  • 抗ストレス作用(精神的緊張の緩和)


⚠️ 使用上の注意

  • 実熱がある(のぼせ、赤ら顔など)場合は適さない。
  • 虚寒がない場合に服用すると発汗やほてりが出ることがある。
  • 胃弱者では呉茱萸の刺激により胃部不快感が出ることがある。


💬 臨床応用例

  • 冷え性、四肢厥冷(特に女性の冷え症)
  • 月経痛、月経不順、不妊症
  • 頭痛、肩こり、手足のしびれ
  • レイノー病、末端循環障害
  • 下腹部痛、慢性腰痛、神経痛(寒冷により悪化するもの)


🌱 類方鑑別

比較方剤相違点
当帰四逆湯呉茱萸・生姜を含まず、冷えが軽い場合に用いる。
桂枝加朮附湯関節痛・筋肉痛を伴う冷えに。血虚が軽い。
真武湯陽虚+水滞による冷えに。むくみや下痢を伴う場合に用いる。


📖 メモ

  • 「当帰四逆湯」に呉茱萸・生姜を加え、より強く温める作用を持たせた方剤。
  • 「血虚+寒邪」の冷えに最も適する古典的名方。
  • 特に「手足の冷えがひどく、しもやけ・月経痛を伴うタイプ」に用いられる。

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