概要
養血通脈（ようけつつうみゃく）とは、血を養って虚損を補い、血脈の通暢を回復させる治法である。 血虚により血脈が十分に滋養されず、経脈の流通が阻滞した結果、しびれ・冷感・脈細などの症状が現れる場合に用いる。 したがってこの法は、血虚によって血脈が閉塞または不利となった状態に適応する。
「通則不痛、栄則不痺」の原理に基づき、血を充実させて栄養を補い、脈を通じて経絡・筋肉・四肢を温養することを目的とする。 しばしば「補血活血」「温経通絡」と併用して用いられる。
主な適応症状
- 手足のしびれ・冷え・倦怠
- 顔色蒼白・唇爪淡白
- 脈細弱・舌淡・苔薄白
- 月経量少・遅延・閉経
- 筋肉の萎縮・四肢の無力
- 慢性的な末梢循環障害・冷え症
これらは、血虚により経脈が滋養されず、血の流れが滞った結果、脈が通じにくくなるために生じる。
主な病機
このため、養血を基本としながら、脈を通じさせるための活血・温経・補気などを兼ねるのが特徴である。
主な配合法
- 養血通脈＋補気：気血両虚で倦怠・冷えが強い場合（例：当帰補血湯）。
- 養血通脈＋温経：寒による血脈不通・冷えの強い場合（例：当帰四逆湯）。
- 養血通脈＋活血：血虚を本とし瘀血を標とする場合（例：通脈四逆湯＋四物湯）。
- 養血通脈＋調経：血虚寒凝による月経遅延や無月経（例：温経湯）。
- 養血通脈＋益気温陽：陽虚血虚が併存する場合（例：十全大補湯）。
代表的な方剤
- 当帰四逆湯（とうきしぎゃくとう）：養血温経・通脈。血虚寒凝による手足厥冷・しびれに用いる。
- 当帰補血湯（とうきほけつとう）：補気養血・通脈。気血両虚で顔色萎黄・倦怠・末梢冷えなどに適す。
- 温経湯（うんけいとう）：養血調経・温経散寒。血虚寒凝による月経不調や不妊に用いる。
- 十全大補湯（じゅうぜんたいほとう）：補気養血・温陽通脈。術後・虚弱体質に伴う手足冷えに応用。
- 通脈四逆湯（つうみゃくしぎゃくとう）：回陽救逆・通脈。重度の陽虚・血虚による厥冷に用いる。
臨床でのポイント
- 養血通脈は、血虚を本、脈滞を標として治す法である。
- 単に温めるだけでなく、血を増やし、血流を円滑にすることが重要。
- 冷え症・末梢循環障害・貧血・月経異常などに応用される。
- 瘀血を伴う場合は活血薬を、寒が強い場合は温経薬を併用する。
- 過度の温補は火邪を生むことがあるため、虚実寒熱のバランスを慎重に判断する。
まとめ
養血通脈法は、血を養って虚を補い、血脈を通じさせて四肢・経絡の機能を回復させる治法である。 主に血虚・血寒・気血両虚による冷え・しびれ・月経異常などに用いられ、 代表方剤は当帰四逆湯・当帰補血湯・温経湯など。 その本質は「血を充たして脈を通じる」ことであり、 養血・温経・活血を柔軟に組み合わせることが臨床上の鍵である。
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