概念
補肝腎(ほかんじん)とは、肝腎の精・陰陽を補い、肝腎不足による症状を改善する治法である。 肝腎が不足すると、腰膝酸軟、眩暈、耳鳴、視力低下、手足のしびれなどが生じる。 補肝腎法は、肝腎を養い、精血・陰陽のバランスを回復させることで、腰膝や五官の症状を改善することを目的とする。
所属
補肝法および補腎法に属し、特に肝腎不足による腰膝酸軟、耳鳴、眩暈、視力低下に応用される。
効能
- 肝腎の精・陰陽を補い、機能を回復する。
- 腰膝酸軟、手足のしびれ、関節のだるさを改善する。
- 眩暈、耳鳴、視力低下を軽減する。
- 慢性疲労、腰背のだるさ、骨蒸潮熱などを緩和する。
主治
- 肝腎不足:腰膝酸軟、手足のしびれ、慢性関節痛。
- 肝腎陰虚:眩暈、耳鳴、目のかすみ、骨蒸潮熱。
- 肝腎陽虚:腰膝冷感、下肢無力、疲労倦怠。
- 慢性腰膝痛:肝腎不足に基づく運動制限、下肢冷え。
病機
加齢、過労、慢性疾患、過度の思慮などにより肝腎が不足すると、精血・陰陽の不足が生じ、腰膝酸軟、眩暈、耳鳴、視力低下などの症状が発生する。 補肝腎により肝腎を養い、精血・陰陽を充実させることで症状を改善することが治療の要点である。
代表方剤
- 六味丸(ろくみがん):補腎滋陰・養肝腎。肝腎不足による腰膝酸軟、眩暈、耳鳴に用いる。
- 杞菊地黄丸(こぎくじおうがん):滋肝補腎・明目。肝腎不足による目のかすみ、眩暈、耳鳴に適す。
- 右帰丸(うきがん):補腎養血・強腰膝。肝腎不足による慢性腰膝痛、疲労倦怠に応用。
- 左帰丸(さきがん):補肝腎・滋陰養血。肝腎陰虚による腰膝酸軟、骨蒸潮熱に用いる。
- 七宝美髯丹(しっぽうびぜんたん):補肝腎・滋陰益精。髪や爪の老化、肝腎不足による衰弱感に適する。
臨床応用
- 腰膝酸軟、慢性腰痛、下肢無力。
- 眩暈、耳鳴、視力低下。
- 手足のしびれ、関節のだるさ。
- 慢性疲労、骨蒸潮熱、老化防止。
使用上の注意
- 肝腎陰虚と肝腎陽虚の区別に応じて方剤を選択する。
- 消化機能が弱い場合は健脾薬を併用する。
- 湿熱や実熱が目立つ場合には適さない。
- 虚弱者には補気薬と併用すると効果的。
まとめ
補肝腎法は、肝腎の精・陰陽を補い、腰膝酸軟・眩暈・耳鳴・視力低下など肝腎不足による症状を改善する治法である。 代表方剤は六味丸・杞菊地黄丸・右帰丸・左帰丸などで、肝腎不足の性質や症状に応じて加減する。 肝腎を補い、精血・陰陽を充実させることが治療の要点である。
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