血虚寒凝とは

血虚寒凝（けっきょかんぎょう）とは、血が不足（血虚）して体内を温める力が低下し、寒邪や冷えが体内に停滞（寒凝）した状態を指します。
血虚により体を温め、巡らせる力が不足すると、寒邪が体内に凝結して痛みやしびれ、冷え感が生じます。女性では月経不順・経血少・腹部冷痛として現れることが多く、慢性疾患や加齢による血虚にもみられます。

原因

• 慢性病・出血過多： 血液が消耗し、血虚を生じる。
• 過労・食欲不振： 気血生成不足で血虚を招く。
• 寒邪侵襲： 外部寒邪や冷えた飲食の摂取で体内の陽気を損なう。
• 体質的血虚・陽虚： 先天的に血や陽が不足し、寒凝しやすい。

病理機転

• 血虚により体内の温煦作用が低下 → 陽気が不足し寒邪を排泄できない。
• 寒邪が血行不良部位に停滞 → 経脈・経絡の流れが滞り、痛み・しびれ・凝結を生じる。
• 血虚寒凝が慢性化すると、四肢の冷え・手足のしびれ・腹部の冷痛・月経異常などが固定化する。

主な症状

• 四肢の冷え・末端のしびれ
• 腹部の冷痛、月経痛・月経量少
• 顔色淡白、唇色淡、めまい・動悸・疲労感
• 舌淡、苔薄白、脈細・沈または弱
• 寒冷を嫌う、暖を好む

舌・脈の所見

• 舌： 淡、苔薄白
• 脈： 細・沈・弱

代表的な方剤

• 当帰四逆加呉茱萸生姜湯（とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう）： 血虚寒凝による四肢冷痛・手足の冷えに。
• 当帰芍薬散（とうきしゃくやくさん）： 血虚で血行不良・下腹部冷痛・月経不順に。
• 温経湯（うんけいとう）： 血虚寒凝による血行停滞・経絡痛・四肢冷えに。
• 桂枝加芍薬湯（けいしかしゃくやくとう）： 血虚寒凝による腹部・四肢の冷痛に。

治法

• 補血温経： 血を養い、経絡・臓腑を温める。
• 温陽散寒： 寒邪を除き、陽気を補う。
• 活血通絡： 血行を促し、凝滞した寒を散じる。

養生の考え方

• 身体を冷やさず、手足や腰腹を温める。
• 温性・血を養う食材（羊肉、鶏肉、当帰、黒ごま、にんじんなど）を摂る。
• 過労や夜更かしを避け、十分な休養をとる。
• 寒冷地での外出時には防寒を徹底する。
• 軽い運動で血流を促進し、寒凝を防ぐ。

まとめ

血虚寒凝とは、血が不足して体内を温める力が低下し、寒邪が停滞した状態です。
症状は四肢冷え・腹部冷痛・月経不順・顔色淡白などで、治療は補血温経・温陽散寒・活血通絡を基本とします。
生活面では身体を温め、血を養い、血行を促すことで根本的な改善が可能です。