桔梗湯(ききょうとう)

📘 基本情報

項目内容
方剤名桔梗湯(ききょうとう)
出典『金匱要略』
分類解表清熱剤(咽喉炎方)
保険適用エキス製剤桔梗湯(ツムラ97、クラシエ97など)
構成生薬桔梗(ききょう)・甘草(かんぞう)


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能清熱利咽消腫止痛
主治咽喉の腫脹・疼痛・乾燥感・発赤。
嚥下痛・声枯れを伴うことが多い。
病機風熱・熱邪が上焦(咽喉)にこもり、気機が阻滞して腫痛を生じた状態。
現代的適応咽喉炎、扁桃炎、喉頭炎、声帯炎、発声障害など。


🌡 臨床的特徴

観点内容
使用目標(証)体力中等度〜やや虚。
咽喉部の痛み・発赤・違和感を主症状とする。
咳嗽・痰が少なく乾燥傾向。
体質傾向喉が弱く、炎症を起こしやすい体質。
過労・乾燥などで喉に違和感が出やすい。
舌診やや紅舌、薄白苔または薄黄苔。
脈診やや数、または弦。


💊 構成生薬と作用

生薬名主要作用
桔梗宣肺・利咽・排膿作用。咽喉の炎症・腫脹・疼痛を鎮める。
甘草清熱解毒・緩急止痛。桔梗と配合することで相乗的に咽喉痛を軽減。


🩺 現代医学的な理解

  • 抗炎症作用(咽頭・喉頭・扁桃の炎症軽減)
  • 鎮痛作用(嚥下痛・灼熱感の緩和)
  • 抗菌・抗ウイルス作用(上気道感染に対して)
  • 去痰・鎮咳作用
  • 粘膜保護作用


⚠️ 使用上の注意

  • 実熱の強い咽喉炎には力不足。
    (強い発熱・腫脹には桔梗石膏などが適す。)
  • 虚寒・乾燥による喉の違和感には不向き。
  • 甘草含有のため、長期多用で偽アルドステロン症に注意。


💬 臨床応用例

  • 軽度〜中等度の咽喉炎・扁桃炎
  • 発声障害・声枯れ
  • 咳嗽・喉の異物感
  • 咽喉部膿瘍の補助治療(排膿促進)
  • 風邪の回復期に残る喉の違和感


🌱 類方鑑別

比較方剤相違点
桔梗石膏実熱性の強い咽喉痛に使用。石膏を加えた強清熱方。
甘草湯急性咽喉炎で腫脹より痛みが主の場合。より単純で作用穏やか。
銀翹散風熱感冒初期で喉痛・発熱・咳を伴う場合。
麦門冬湯乾燥性の喉の痛み・声のかすれ・空咳に。


📖 メモ

  • たった二味(桔梗・甘草)ながら、咽喉痛治療の基本方として重用される。
  • 桔梗が上焦(咽喉)に薬効を導き、甘草が炎症と痛みを和らげる「相使」の関係。
  • 古来より「桔梗湯は喉の痛みに第一」とされる。
  • 軽い咽喉炎や声の使いすぎによる喉痛に適する。
  • 慢性化・実熱化した場合は桔梗石膏へ転方を考慮。

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