桔梗石膏（ききょうせっこう）

📘 基本情報

項目	内容
方剤名	桔梗石膏（ききょうせっこう）
出典	『金匱要略』
分類	清熱解毒剤（咽喉炎方）
保険適用エキス製剤	桔梗石膏（ツムラ96、クラシエ96など）
構成生薬	桔梗（ききょう）・石膏（せっこう）・甘草（かんぞう）・生姜（しょうきょう）

🧭 方意（効能と主治）

区分	内容
効能	清熱瀉火、利咽消腫。
主治	咽喉腫痛、咽喉の熱感、発赤、嚥下痛。 咳嗽や痰を伴う場合もある。
病機	肺胃実熱により咽喉部に炎症・腫脹・疼痛が生じる。 熱毒が上焦にこもった状態。
現代的適応	咽喉炎、扁桃炎、喉頭炎、咽頭痛、声枯れ、発熱性疾患の咽喉症状など。

🌡 臨床的特徴

観点	内容
使用目標（証）	体力中等度〜やや強。 咽喉の発赤・腫脹・強い痛み・熱感を伴う。 発熱・口渇を伴うことが多い。
体質傾向	炎症を起こしやすい体質。 喉の痛みが出やすく、熱感や発赤を伴う。
舌診	紅舌、黄苔または薄黄苔。
脈診	数または弦数。

💊 構成生薬と作用

生薬名	主要作用
桔梗	宣肺・利咽・排膿作用。咽喉の腫脹・疼痛・痰を鎮める。
石膏	清熱瀉火。炎症・発熱を鎮め、喉の熱感・痛みを軽減。
甘草	清熱解毒・緩急止痛。桔梗と相使して咽喉痛を鎮める。
生姜	発散・調和作用。薬性を和らげ、上焦への通達を助ける。

🩺 現代医学的な理解

• 抗炎症作用（喉頭・咽頭の炎症抑制）
• 抗菌作用（連鎖球菌・ブドウ球菌などに対して）
• 鎮痛作用（嚥下痛・喉の灼熱感軽減）
• 解熱・鎮咳・去痰作用
• 免疫調整作用（上気道炎の回復促進）

⚠️ 使用上の注意

• 虚証・冷え性体質の人には不向き。
• 炎症が軽度で乾燥性・慢性の咽喉痛には適さない。
• 石膏の性質により、胃腸虚弱者は胃もたれを起こすことがある。
• 甘草含有のため、長期使用時は偽アルドステロン症に注意。

💬 臨床応用例

• 咽頭炎・扁桃炎・喉頭炎（急性期の腫脹・疼痛）
• 発熱性疾患の咽喉痛（かぜ・インフルエンザなど）
• 声枯れ・発声困難
• 咳嗽を伴う上気道炎
• 口内炎や咽喉部膿瘍の補助治療

🌱 類方鑑別

比較方剤	相違点
桔梗湯	咽喉痛・軽度の炎症に。石膏がなく、やや虚証向き。
甘草湯	急性の咽喉痛・声枯れに。単純で作用は穏やか。
銀翹散	風熱感冒で喉の痛みを伴う初期感冒に使用。
小柴胡湯	喉の痛みよりも咽喉違和感や熱感が主の慢性炎症に適す。

📖 メモ

• 急性の咽喉痛に対する「清熱利咽」の代表方。
• 石膏の強い清熱力で喉の熱を下げ、桔梗が炎症部位に作用を導く。
• 風熱・実熱いずれにも対応可能で、声の使いすぎによる喉痛にも有効。
• 「桔梗＋甘草」の組み合わせは鎮痛に優れ、「桔梗甘草湯」として単独応用されることもある。
• 現代では、抗生剤投与と併用されることが多い。