甘草湯(かんぞうとう)

📘 基本情報

項目内容
方剤名甘草湯(かんぞうとう)
出典『傷寒論』
分類温裏剤・鎮痙鎮痛薬
保険適用エキス製剤甘草湯(ツムラ91、クラシエ91など)
構成生薬甘草(かんぞう)


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能緩急止痛解痙鎮痛
主治急激な筋攣縮・疼痛・咽喉腫痛。
特に四肢のひきつれ・こむら返り・咽喉の腫痛など。
病機寒邪や血虚による筋肉・経絡の拘急、または咽喉部の炎症・痙攣。
現代的適応こむら返り、筋肉痛、咽喉炎、声枯れ、舌の痙攣、胃痙攣など。


🌡 臨床的特徴

観点内容
使用目標(証)体力中等度〜やや虚。
筋肉のけいれん、ひきつれ、痛み。
または咽喉の痛み・声のかすれ。
体質傾向疲れやすく筋肉の緊張が起こりやすい人。
または声をよく使う人。
舌診淡紅舌、薄白苔。
脈診やや弱または緩。


💊 構成生薬と作用

生薬名主要作用
甘草緩急止痛、解毒、調和諸薬。
筋肉の痙攣やけいれんを鎮め、疼痛を和らげる。
また、咽喉部の炎症を鎮める。


🩺 現代医学的な理解

  • 抗炎症作用(咽喉痛・咽頭炎に有効)。
  • 鎮痙作用(筋肉のけいれん・こむら返りを軽減)。
  • 抗アレルギー作用(喉の炎症や咳嗽の緩和)。
  • 副腎皮質機能を補助する作用。


⚠️ 使用上の注意

  • 長期使用により偽アルドステロン症を起こすことがある(浮腫・血圧上昇・低K血症)。
  • 高齢者や心疾患・高血圧のある人は慎重投与。
  • 他の甘草含有製剤との併用は避ける。
  • 急性期の咽喉炎やこむら返りに短期的に用いるのが原則。


💬 臨床応用例

  • こむら返り、筋肉のけいれん
  • 咽喉炎・扁桃炎による咽喉痛・声枯れ
  • 舌や咽頭の筋けいれん
  • 胃痙攣・腹部けいれん
  • 声を酷使する職業(歌手・講師・教師など)の咽喉違和感


🌱 類方鑑別

比較方剤相違点
芍薬甘草湯こむら返りや筋痙攣で、痛みが強い場合に用いる。芍薬を加えて筋緊張をさらに緩める。
桔梗湯咽喉の腫脹・疼痛に、桔梗の排膿・抗炎症作用を加えたもの。
半夏厚朴湯咽喉部の異物感・閉塞感に用いる。痙攣よりも精神的要素が強い。


📖 メモ

  • 『傷寒論』では「脚攣急」に対して用いられた単味方。
  • 甘草単独で用いる最も代表的な処方。
  • 筋けいれん・咽喉痛いずれにも「急に起こる痛み」に有効。
  • 現代では、芍薬甘草湯より軽度のけいれんや咽喉炎の初期に使われる。

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