脾腎両虚(ひじんりょうきょ) とは、脾と腎の両方の機能が低下し、気・血・津液の生化や温煦・固摂作用が衰えた状態を指します。
脾は「後天の本」、腎は「先天の本」とされ、両者は互いに助け合って生命活動を維持しています。
そのため、脾腎がともに虚すると、気血の生成不足・水分代謝の障害・寒冷傾向などを示し、慢性の消化器症状や下痢、むくみ、冷え、腰膝のだるさなどが見られます。
原因
- 久病・加齢: 長期の疾患や加齢により腎精が衰え、脾気も弱まる。
- 過労・過度の思慮: 長時間の肉体的・精神的疲労が脾気を損傷し、さらに腎を消耗する。
- 飲食の不摂: 不規則な食事・冷飲食・過食が脾を傷め、気血の生成が減少する。
- 慢性下痢・失血: 長引く下痢や出血で脾気・腎気がともに損なわれる。
- 生まれつきの虚弱: 先天的に腎気が不足し、後天の脾気の働きも弱い。
主な症状
- 食欲不振、腹部の膨満、下痢または水様便
- 疲労感、倦怠、手足の冷え
- 腰や膝がだるく痛む
- 顔色が白く艶がない
- 尿量が多いまたは少ない、むくみ
- 性機能低下、寒がり
- 慢性疾患・長期病後の体力低下
舌・脈の所見
- 舌: 淡白、苔は白く湿潤
- 脈: 沈細または弱
代表的な方剤
- 附子理中湯(ぶしりちゅうとう): 脾腎陽虚による冷えと消化不良に。
- 真武湯(しんぶとう): 脾腎陽虚による浮腫・下痢・倦怠に。
- 八味地黄丸(はちみじおうがん): 腎陽虚が主で、腰膝のだるさ・寒冷感を伴う場合に。
- 参苓白朮散(じんれいびゃくじゅつさん): 脾気虚が中心で、湿困や疲労感が強い場合に。
- 腎気丸(じんきがん): 脾腎両虚に冷えや排尿異常を伴う場合に。
養生の考え方
- 冷たい飲食を避け、温かいものを摂る
- 過労を避け、十分な睡眠と休養をとる
- 脾を補う食材(山芋、なつめ、米、カボチャ)と、腎を補う食材(黒ごま、くるみ、黒豆、羊肉)を取り入れる
- 冷えた環境を避け、下半身を温める
- ゆっくりとした呼吸法や軽い運動で気を養う
まとめ
脾腎両虚とは、「後天の本」である脾と「先天の本」である腎がともに弱り、気血の生成と温煦・固摂作用が低下した状態です。
治療・養生の基本は「健脾補腎」「温陽益気」であり、冷えや下痢、倦怠を改善し体力を回復させることを目指します。
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