桂枝加黄耆湯（けいしかおうぎとう）

📘 基本情報

項目	内容
方剤名	桂枝加黄耆湯（けいしかおうぎとう）
出典	『金匱要略』
分類	補気解表剤（風邪表証＋気虚）
保険適用エキス製剤	桂枝加黄耆湯（ツムラ72、クラシエ72など）
構成生薬	桂枝・黄耆・芍薬・甘草・生姜・大棗・防風

🧭 方意（効能と主治）

区分	内容
効能	補気解表、固表止汗。
主治	表証を伴う気虚の状態：自汗、倦怠感、風邪初期の発熱、悪寒、鼻閉、頭痛など。
病機	風寒邪が表に侵入し、気虚により衛気が固まらず汗出過多、外邪が排泄しにくい状態。
現代的適応	風邪初期の体力低下者、自汗、易疲労、発熱・悪寒、鼻炎、慢性疲労症候群の補助療法。

🌡 臨床的特徴

観点	内容
使用目標（証）	体力中等度〜やや虚。 外感風寒の表証と気虚が混在。 自汗・倦怠・微熱・悪寒がある。
体質傾向	疲れやすく、汗をかきやすい虚弱体質。風邪にかかりやすい。
舌診	淡紅舌、薄白苔
脈診	浮弱または虚緩

💊 構成生薬と作用

生薬名	主要作用
桂枝	発汗・解表作用。風寒を散らす。
黄耆	補気固表、発汗の過多を抑える。
芍薬	緩急止痛、桂枝との協調で血の流れを整える。
甘草	諸薬の調和、胃腸保護、緩急止痛。
生姜・大棗	脾胃を保護し、解表作用を補助。
防風	疎散風寒、固表作用を補助。

🩺 現代医学的な理解

• 免疫調整作用：風邪初期の症状緩和
• 発汗調整：自汗・過剰発汗を抑制
• 抗疲労作用：倦怠感の軽減
• 抗炎症作用：軽度上気道炎に有効
• 気虚改善：体力低下による風邪症状を和らげる

⚠️ 使用上の注意

• 実熱・実証の風邪には不向き。
• 体力極端に虚弱な場合は補気方と併用することが望ましい。
• 発汗が少ない場合は桂枝湯または他方剤との比較を考慮。

💬 臨床応用例

• 風寒感冒初期の体力低下者
• 自汗・易疲労・微熱・悪寒を伴う感冒
• 慢性疲労、倦怠感の補助療法
• 自汗や軽度の風邪症状を伴う高齢者や虚弱体質者
• 鼻炎、軽度頭痛、咽喉の違和感

🌱 類方鑑別

比較方剤	相違点
桂枝湯	表証のみ。気虚が強くない場合に使用。
補中益気湯	気虚補益を中心。表証には不向き。
麻黄湯	実証・寒熱兼ね備える風邪に使用。虚弱者には強すぎる。
桂枝加葛根湯	肩背のこわばりや頭痛、肩こりに特化。

📖 メモ

• 桂枝湯に黄耆を加えて「気虚を補い、固表止汗」を強化した方。
• 自汗・易疲労を伴う感冒初期に適応。
• 表証＋気虚が混在するタイプの体質改善にも使用される。
• 発汗を調整し、外邪を排出しつつ体力低下を補う。