防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)

📘 基本情報

項目内容
方剤名防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
出典『宣明論』
分類解表清裏・瀉下剤(外と内の熱をともに除く方)
保険適用エキス製剤防風通聖散(ツムラ62、クラシエ62など)
構成生薬防風・荊芥・麻黄・連翹・薄荷・石膏・山梔子・黄芩・滑石・桔梗・芒硝・大黄・白朮・当帰・芍薬・川芎・甘草・生姜・荊芥・薄荷(計18味)


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能解表清熱瀉下通便活血消腫(外と内の熱・毒・滞りを取り除く)
主治実熱・肥満体質で、のぼせ・顔面紅潮・便秘・発汗過多・腹満・高血圧傾向などを伴う。
肥満、高血圧、皮膚炎、吹出物など。
病機体内に熱と老廃物(湿熱・瘀血)が滞り、気血の流れが阻滞する。
表裏の実熱が混在し、体内に「熱・毒・滞」がこもる。
現代的適応肥満症、高血圧、脂質異常症、便秘、皮膚炎(にきび・湿疹・吹出物)、肩こり、動脈硬化の予防


🌡 臨床的特徴

観点内容
使用目標(証)体力中等度~充実した実証体質。
肥満傾向で便秘しやすく、顔色赤く、のぼせ・発汗・動悸・口渇がある。
体質傾向実熱・多汗・肥満・高血圧傾向。いわゆる“メタボ体質”。
舌診紅く厚い黄苔。
脈診弦・実・数。


💊 構成生薬と作用

生薬名主要作用
防風・荊芥・薄荷・麻黄発汗解表。体表の熱・炎症・むくみを取り除く。
石膏・黄芩・山梔子・連翹清熱瀉火・解毒。体内の炎症やのぼせを鎮める。
大黄・芒硝瀉下通便。腸にたまった熱・老廃物を排出。
当帰・川芎・芍薬活血化瘀・養血。血の巡りを整え、肌や生理の乱れを改善。
白朮・甘草・生姜・滑石・桔梗利水・健脾・調和諸薬。全体のバランスを整える。


🩺 現代医学的な理解

  • 脂質代謝促進作用(肥満・脂肪肝の改善)
  • 抗炎症作用(皮膚炎・にきび・吹出物)
  • 利尿・便通改善作用(老廃物排泄促進)
  • 自律神経・代謝調整作用(のぼせ・高血圧の緩和)
  • 抗酸化・抗動脈硬化作用


⚠️ 使用上の注意

  • 虚証(体力がない、冷え性、下痢しやすい人)には不向き。
  • 体力のない人に使用すると、胃腸障害・倦怠感・下痢を起こすことがある。
  • 瀉下作用があるため、便が軟らかい場合は減量や中止を検討。


💬 臨床応用例

  • 肥満症(特に皮下脂肪型肥満)
  • 高血圧・脂質異常症
  • 便秘を伴う代謝異常
  • にきび・吹出物・皮膚炎
  • 更年期ののぼせ・いらだち
  • 肩こり・頭痛・動悸・便秘傾向を伴う実証体質


🌱 類方鑑別

比較方剤相違点
防已黄耆湯虚証の肥満・むくみに用いる。体力が弱く汗かき。
大柴胡湯胸脇苦満・便秘・実熱を伴う肥満に。中間証~実証。
防風通聖散熱・便秘・皮膚炎を伴う実証肥満に最も適する。
防已茯苓湯水滞・痰湿型の肥満(冷え・むくみが主)に適応。


📖 メモ

  • 「体の中の余分な熱と老廃物を出して体を軽くする」典型的な実証方。
  • 古来「万病の元である熱・毒・滞を通す」方として広く使用。
  • 肥満体質・便秘・皮膚炎を伴う場合に特に有効。
  • 瀉下成分(大黄・芒硝)を含むため、体質に合わせた運用が重要。

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