概要
通竅止痛（つうきょうしつう）とは、気血の流れや経絡の通りをよくして、滞りによって生じる痛みを止める治法である。 「竅（きょう）」とは身体の通路、すなわち経絡・気血の通り道・感覚器官などの開口部を指し、これが風寒・湿・熱・痰・瘀血などの邪によって閉塞されると、頭痛・関節痛・鼻閉・耳鳴・疼痛などが起こる。
通竅止痛法は、閉塞を除き、気血の運行を回復させて痛みを止めることを目的とする。 特に、風寒・瘀血・痰濁などによる経絡閉塞性疼痛に広く用いられる。
主な適応症状
- 頭痛・偏頭痛・頭重感
- 鼻閉・鼻漏・嗅覚低下
- 耳鳴・難聴
- 関節痛・筋肉痛・冷えによる疼痛
- 胸脇痛・腹痛・経痛
- 舌質暗・苔薄白または薄黄・脈弦または渋
これらは、気血運行の滞り・経絡閉塞・瘀血や痰湿の停滞によって引き起こされる。 通竅止痛法は、滞りを除き、経絡を疏通させて痛みを鎮める。
主な病機
したがって通竅止痛法は、風・寒・湿・痰・瘀のいずれかを除き、気血を通じて疼痛を止めることを原則とする。
主な配合法
- 通竅止痛＋祛風散寒：風寒頭痛・項背のこわばり（例：川芎茶調散・呉茱萸湯）。
- 通竅止痛＋活血化瘀：瘀血による固定性疼痛（例：通竅活血湯・血府逐瘀湯）。
- 通竅止痛＋化痰開竅：痰濁による頭重・眩暈・鼻閉（例：半夏白朮天麻湯・蒼耳散）。
- 通竅止痛＋清熱：熱邪上擾・炎症性頭痛・鼻炎（例：辛夷清肺湯・清上蠲痛湯）。
- 通竅止痛＋補気養血：気血不足で通利が弱く、慢性痛が続く場合（例：補中益気湯＋川芎茶調散）。
代表的な方剤
- 川芎茶調散（せんきゅうちゃちょうさん）：祛風止痛・通竅散寒。風邪頭痛・鼻閉・肩こりに用いる。
- 通竅活血湯（つうきょうかっけつとう）：活血通竅・祛風止痛。瘀血による頭痛・顔面痛・慢性鼻炎に適す。
- 呉茱萸湯（ごしゅゆとう）：温中散寒・降逆止痛。寒邪による偏頭痛・嘔気・胃寒に用いる。
- 辛夷清肺湯（しんいせいはいとう）：清熱通竅。鼻閉・副鼻腔炎・慢性鼻炎に応用。
- 蒼耳散（そうじさん）：祛風通竅・止痛。鼻閉・頭痛・嗅覚障害に適す。
臨床でのポイント
- 通竅止痛は、痛みの根本が「不通」にある場合（気血・経絡の閉塞）に用いる。
- 風寒・瘀血・痰湿など、閉塞の性質を見極めて治法を組み立てる。
- 寒が強ければ温通、熱があれば清熱、痰があれば化痰を併用する。
- 慢性頭痛・神経痛・鼻閉などでは、活血化瘀・補気養血を加えるとよい。
- 「通じれば痛み止む」という原則を基本に、経絡と気血の流通回復を図る。
まとめ
通竅止痛法は、気血や経絡の滞りを除き、通利を回復して痛みを止める治法である。 代表方剤は川芎茶調散・通竅活血湯・呉茱萸湯・辛夷清肺湯・蒼耳散などで、 風寒頭痛・瘀血性疼痛・痰濁性頭重・鼻閉・関節痛などに広く応用される。 臨床では、「通じて則ち痛み止む」を指針として、滞りの性質（寒・熱・痰・瘀）に応じて処方を組み立てることが要点である。
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