芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)

📘 基本情報

項目内容
方剤名芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
出典『傷寒論』
分類鎮痛・緩急剤(筋痙攣緩解剤)
保険適用エキス製剤芍薬甘草湯(ツムラ68、クラシエ68など)
構成生薬芍薬(白芍)・甘草(炙甘草)


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能緩急止痛(筋肉のけいれん・疼痛を緩和する)。
主治急激な筋肉のけいれん・疼痛・引きつり。
四肢・腹・背部などの筋攣縮を伴う症状。
病機陰血不足による筋失濡養、および気の滞りにより経筋が拘急して痛む状態。
現代的適応こむら返り、筋痙攣、神経痛、腰痛、腹痛、月経痛、食道痙攣、胆石・尿路結石発作など。


🌡 臨床的特徴

観点内容
使用目標(証)体力中等度〜やや虚。
筋肉のけいれん・こむら返り・痛みを訴える。
急性・慢性を問わず使用可能。
体質傾向虚実を問わず使用可。特に疲労・脱水・冷え・過労などによる筋拘急。
舌診淡紅舌または淡白舌、やや乾燥。
脈診弦、またはやや緊張した脈。


💊 構成生薬と作用

生薬名主要作用
芍薬(白芍)養血柔肝、緩急止痛。筋肉を滋養し、けいれんを和らげる。
甘草(炙甘草)補中益気、緩急止痛。芍薬と相使して鎮痛・鎮痙作用を高める。


🩺 現代医学的な理解

  • 筋弛緩作用(筋肉の過緊張を緩める)
  • 鎮痛・鎮痙作用(疼痛・こむら返りの軽減)
  • 電解質調整作用(Ca²⁺・K⁺のバランス改善)
  • 平滑筋・骨格筋の過活動抑制作用
  • 中枢性鎮痙・鎮痛作用


⚠️ 使用上の注意

  • 甘草の長期使用による偽アルドステロン症(浮腫・高血圧・低K血症)に注意。
  • 心疾患・腎疾患・高血圧の患者では慎重に使用。
  • 過量服用により倦怠感・筋力低下を生じることがある。


💬 臨床応用例

  • こむら返り(夜間下肢筋けいれん)
  • 腰背筋痛・肩こり
  • 月経痛・腹痛・下腹部けいれん
  • 胆石・尿路結石発作
  • 食道痙攣・咽喉頭異常感
  • 神経痛・筋肉痛・運動後の筋けいれん


🌱 類方鑑別

比較方剤相違点
芍薬甘草附子湯冷えを伴うけいれんや関節痛に使用。附子を加えて温経・鎮痛作用を強化。
桂枝加芍薬湯腹痛・下痢など腸管のけいれん性疼痛に用いる。表虚+腹部拘急が目標。
桂枝加芍薬大黄湯便秘を伴う腹痛に適応。実熱傾向がある。
芍薬甘草湯五苓散脱水傾向や発汗過多によるこむら返りに併用されることが多い。


📖 メモ

  • 方剤中で最も単純な二味方だが、鎮痛効果は非常に速効性がある。
  • 「筋肉のけいれんにはまず芍薬甘草湯」と言われる代表的な鎮痙方。
  • 急性期の疼痛に頓服的に用いることも多い。
  • スポーツ選手のこむら返り、夜間下肢けいれんなどで頻用される。
  • 甘草の副作用を避けるため、長期連用は避け、症状に応じて使用する。

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