概念
清熱鎮痙(せいねつちんけい)とは、体内の熱邪を清し、痙攣・けいれん・筋の引きつりなどを鎮める治法である。
主として熱邪や風熱が内動し、筋脈を拘急させる病機に対して用いられる。
清熱鎮痙法は、熱を清し、風を息め、筋脈を和らげて痙攣を止めることを目的とする。
所属
主に清熱法と息風法に属する。
特に熱極生風(ねつきょくせいふう)や熱邪入絡による痙攣・高熱・意識障害などに応用される。
効能
- 熱邪を清し、体内の炎症や熱証を鎮める。
- 風熱内動を抑え、筋肉や四肢のけいれんを鎮める。
- 意識障害・高熱による痙攣を改善する。
- 肝風内動を平息し、神志を安定させる。
- 発熱性疾患に伴う神経興奮を緩和する。
主治
- 熱極生風:高熱・痙攣・手足の引きつり・眼球上転。
- 風熱動風:発熱・頭痛・眩暈・けいれん。
- 肝経実熱:顔面紅潮・筋のぴくつき・怒りっぽい。
- 小児熱性痙攣:高熱・不機嫌・四肢の硬直。
- 感染性熱病後の後遺症:痙攣、筋緊張、神志不清など。
病機
熱邪が体内に侵入すると、気血が煎熬されて内熱が亢進し、さらに熱極すれば風を生じる(熱極生風)。
このとき、肝風内動や熱入絡脈により、筋肉が拘急し痙攣が発生する。
清熱鎮痙法は、清熱・熄風・安神を図ることで、筋肉と神経の過度な興奮を抑える。
代表方剤
- 羚角鉤藤湯(れいかくこうとうとう):熱盛によるけいれん・高熱・神昏。
- 牛黄清心丸(ごおうせいしんがん):熱邪上擾による神志不清・痙攣。
- 鎮肝熄風湯(ちんかんそくふうとう):肝陽上亢・熱動風による震えや痙攣。
- 清営湯(せいえいとう):熱入営血・高熱による発熱・神昏・痙攣。
- 安宮牛黄丸(あんきゅうごおうがん):熱入心包・譫語・痙攣・昏迷。
臨床応用
- 高熱に伴うけいれん・意識障害。
- 小児の熱性けいれん。
- 脳炎・髄膜炎・てんかんなどに伴う痙攣(補助的に)。
- 脳血管障害による筋拘縮や緊張。
- 肝陽上亢・肝風内動に伴う震えや興奮状態。
使用上の注意
- 寒証や虚証の痙攣には使用しない(温養法・補益法を用いる)。
- 高熱時には西洋医学的処置を優先し、補助的に応用する。
- 体力低下や陰虚の者には、滋陰熄風薬を併用する。
- 長期使用は避け、病勢に応じて清熱から補陰へと治法を移行する。
まとめ
清熱鎮痙法は、熱邪や風熱が内動して生じる痙攣・けいれんを鎮める治法である。
治法の要点は清熱・息風・安神であり、代表方剤には羚角鉤藤湯・鎮肝熄風湯・安宮牛黄丸などがある。
特に高熱・熱極生風・神志昏迷を呈する急証に応用される。
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