概念
強筋(きょうきん)とは、筋肉や筋力を強め、筋の萎縮・弛緩・拘急などの症状を改善する治法である。
主として肝腎の不足・気血の虚弱・風湿痺阻などにより、筋肉が栄養を失い、力が入らない、しびれる、こわばるなどの症状が現れる場合に用いられる。
強筋法は、肝腎を補い、気血を養い、経絡を通じて筋肉の働きを回復させることを目的とする。
所属
主に補益法および祛風湿法の中に属し、特に肝腎を補って筋骨を強健にする目的で用いられる。
また、筋肉の運動障害や筋萎縮などに対しては、通経活絡法や祛風湿法と併用されることが多い。
効能
- 筋力を強め、関節運動を改善する。
- 肝血・腎精を補って筋骨を養う。
- 筋肉の弛緩・萎縮・けいれんを軽減する。
- 経絡を通じて気血の流れを促進する。
- 慢性の筋肉疲労や筋虚弱を回復させる。
主治
- 肝腎不足:足腰のだるさ、筋力低下、歩行困難、膝の無力感。
- 気血不足:四肢のしびれ、筋萎縮、疲れやすい。
- 風湿痺阻:関節痛、筋肉のこわばり、屈伸困難。
- 筋脈失養:慢性の筋虚弱や神経系の回復期。
病機
肝は筋を主り、腎は骨を主る。
肝血・腎精が不足すると、筋肉や関節が十分に栄養を得られず、筋力低下・萎縮・疼痛などが生じる。
また、風湿の邪が経絡に停滞すれば、気血の運行が妨げられ、筋肉のこわばりや疼痛を引き起こす。
強筋法は、補肝腎・養気血・祛風湿・通経絡によって筋の働きを回復させる。
代表方剤
- 独活寄生湯(どっかつきせいとう):肝腎不足による腰膝の痛み・筋骨の無力感。
- 八味地黄丸(はちみじおうがん):腎虚による筋力低下・足腰の冷え。
- 牛膝散(ごしつさん):風湿痺阻による筋脈拘急・関節不利。
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう):気虚による筋疲労・無力感。
- 杜仲丸(とちゅうがん):肝腎不足・筋骨無力に用いる補益方。
臨床応用
- 筋萎縮性疾患、神経系リハビリ期の筋力回復。
- 下肢の脱力、腰膝のだるさや筋肉痛。
- 慢性関節リウマチ、神経痛。
- 老化による筋力低下、歩行不安定。
- 長期病後の体力低下・筋衰弱。
使用上の注意
- 急性の炎症・腫脹・熱感を伴う場合は清熱・利湿薬を優先する。
- 虚証には補益薬を、実証には祛風湿・通絡薬を組み合わせる。
- 長期使用する場合は、胃腸の負担に注意する。
- 運動療法や温熱療法を併用すると効果が高い。
まとめ
強筋法は、肝腎を補い、気血を養って筋骨を強健にする治法である。
主に肝腎不足・気血虚弱・風湿痺阻による筋力低下・萎縮・こわばりに適応し、
代表方剤には独活寄生湯・八味地黄丸・杜仲丸などがある。
補益と通絡を兼ねることが臨床上の要点である。
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