概念
健脊強腰（けんせききょうよう）とは、脊柱（せきちゅう）と腰部の機能を強化し、筋骨を健やかにする治法である。
脊と腰は腎および督脈に密接に関係し、腎気が充実してこそ、腰脊は強健である。
腎虚や気血不足、寒湿阻滞などにより、腰脊の倦怠・疼痛・無力・動作困難を生じるため、健脊強腰法では、腎気を補い、気血を充実させ、経絡を通暢にすることを目的とする。
所属
主に補益法および強壮法に属し、腎虚腰膝軟弱・気血不足・寒湿痺阻などによる腰背部の虚弱・疼痛に応用される。
効能
- 腎気を補い、腰脊を強くする。
- 気血を充実させ、筋骨の栄養を改善する。
- 経絡を温通し、寒湿による疼痛を軽減する。
- 筋肉や関節の柔軟性を高める。
- 慢性的な腰背のだるさや倦怠を改善する。
主治
- 腎虚腰痛：腰がだるく力が入らない、膝が弱い、足腰の冷え。
- 気血不足：長時間の立位や疲労で腰背が重だるい。
- 寒湿痺阻：冷湿天候で増悪する腰痛、動作困難。
- 筋骨失養：老化や慢性病による腰脊の萎軟。
- 虚労体質：疲労時に腰が抜けるような感覚。
病機
腎虚・気血不足・寒湿滞絡が主因である。
腎は骨を主り、腰は腎の府であるため、腎気が虚すると腰脊が支えを失う。
また、気血が不足すると筋骨が栄養を失い、寒湿が経絡を阻むと疼痛や動作不利を生じる。
健脊強腰法は、これらを補い通じて腰脊の機能を回復し、筋骨の強健を図る治法である。
代表方剤
- 右帰丸（うきがん）：腎陽虚による腰膝冷痛、倦怠。
- 左帰丸（さきがん）：腎陰虚による腰膝酸軟、めまい、耳鳴。
- 六味丸（ろくみがん）：腎陰虚による腰痛・疲労感。
- 独活寄生湯（どっかつきせいとう）：慢性腰痛、老年性関節症、脚弱。
- 杜仲補腰湯（とちゅうほようとう）：腎虚・筋骨無力による腰痛。
臨床応用
- 慢性腰痛、腰椎症、坐骨神経痛の補助療法。
- 腎虚体質による腰膝酸軟・冷感。
- 加齢や虚労による筋力低下。
- 長期臥床・運動不足による腰背の萎軟感。
- 更年期や老年期の腰脚不利症。
使用上の注意
- 寒湿実証では温化・利湿を先に行う。
- 外傷性の急性腰痛には用いない。
- 腎陰虚・腎陽虚の鑑別を行い、方剤を選択する。
- 長期療法では飲食・運動療法を併用すると良い。
まとめ
健脊強腰法は、腎を補い、気血を養い、筋骨を強健にする治法である。
慢性腰痛・腰背虚弱・脚弱に対して応用され、代表方剤は右帰丸・左帰丸・独活寄生湯など。
腎気充実と経絡通暢を図ることが、治療の核心となる。
0 件のコメント:
コメントを投稿