概念
補気固本（ほきこほん）とは、気を補って身体の根本（元気）を堅固にする治法をいう。 「固本」とは、生命活動の基盤である「元気（原気・真気）」を安定・強化させることであり、補気固本はその中でも特に脾肺を中心に気を養い、全身の機能を充実させることを目的とする。
気虚によって疲労倦怠・息切れ・食欲不振・自汗・免疫低下などを呈する場合に用いられる。
所属
補気固本法は、補益法の中の補気法に属する。 特に、脾肺気虚・元気虚損・久病虚脱などの慢性虚弱状態に対して用いられる。
効能
- 脾肺の気を補い、元気を充実させる。
- 気の固摂作用を高め、津液や汗の漏出を防ぐ。
- 免疫力・抵抗力を高め、再発や慢性化を防止する。
- 身体の回復力を促し、久病・術後・疲労後の体力を補う。
主治
- 脾肺気虚：倦怠・息切れ・声低・自汗・易感冒・食欲低下・下痢。
- 元気不足：慢性疲労・虚弱体質・手足のだるさ・無力感。
- 気不固脱：自汗・下痢・脱肛・子宮脱・滑精など。
- 久病体虚：病後の体力低下・術後の回復不良・免疫低下。
病機
気は生命活動を維持する基本的なエネルギーであり、脾は気を生じ、肺は気を主る。 過労・久病・不正な飲食などにより、脾肺の機能が低下すると、気の生成・運行・固摂作用が失われる。 その結果、疲労・倦怠・自汗・下痢・臓器下垂などの症状が現れる。 補気固本法は、脾肺を補い、元気を回復し、全身の機能を安定させることを目的とする。
代表方剤
- 四君子湯：脾胃気虚による倦怠・食欲不振・下痢。
- 補中益気湯：中気下陥による脱肛・疲労・気虚発熱・食後倦怠。
- 人参湯：脾胃虚寒による冷え・嘔吐・下痢・食欲不振。
- 生脈散：気陰両虚による口渇・動悸・息切れ・自汗。
- 玉屏風散：衛気虚弱による感冒予防・アレルギー体質改善。
- 大補元煎：元気・血をともに補い、体力回復を促進。
臨床応用
- 慢性疲労症候群・虚弱体質。
- 術後・産後・病後の体力回復。
- 自律神経失調症・低血圧・慢性胃腸虚弱。
- アレルギー性鼻炎・喘息・風邪をひきやすい体質。
- 老年期の体力低下・免疫力低下。
使用上の注意
- 実熱証・外邪がある場合には使用しない。
- 過補により、のぼせ・口渇・便秘などの副反応が起こることがある。
- 湿阻や食滞がある場合は、理気・健脾薬を併用して消化を助ける。
- 急性期疾患では、邪気を除いた後に補気を行うのが原則。
まとめ
補気固本法は、脾肺の気を補い、元気を強化して身体の基盤を安定させる治法である。 代表方剤は四君子湯・補中益気湯・玉屏風散などで、脾を健やかにし、肺を助け、気を充実させることを重視する。 虚弱・慢性疲労・免疫低下・気虚体質の改善に広く応用される。
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