脾虚失運とは

脾虚失運とは、脾の運化機能が虚弱となり、水穀の精微や水液を正常に運ぶことができなくなった状態を指す中医学の病証です。
脾は「運化を主る」「昇清を主る」臓であり、その働きが低下すると、湿・痰・食滞が内生し、消化器症状を中心に全身の不調が現れます。

主な原因

• 飲食不節： 過食・偏食・冷飲冷食・脂濃厚味の摂取。
• 久病体虚： 慢性疾患により脾気が消耗。
• 労倦過度： 過労・睡眠不足により脾気を損なう。
• 情志失調： 思慮過度により脾の運化が阻害される。

病理機転

• 脾気虚 → 運化失常 → 水湿が停滞。
• 昇清無力 → 清陽不升 → 倦怠・頭重。
• 水湿内停 → 痰湿内生 → 腹満・下痢。

主な症状

• 食欲不振、食後の腹部膨満
• 軟便・慢性下痢
• 身体が重だるい、倦怠感
• 顔色萎黄、気力低下
• 浮腫、痰が多い

舌・脈の所見

• 舌： 淡胖、歯痕、白膩苔
• 脈： 緩・虚・濡

関連する病証

• 脾虚湿盛
• 湿困脾胃
• 痰湿内生
• 中気不足

治法

• 健脾益気： 脾気を補い運化を回復。
• 化湿利水： 停滞した水湿を除く。
• 昇清降濁： 気機を整え中焦を調える。

養生の考え方

• 温かく消化の良い食事を基本とする。
• 冷たい飲食物・甘味・油物を控える。
• 規則正しい生活と十分な休養。
• 軽い運動で脾気の巡りを促す。

まとめ

脾虚失運は、脾の運化・昇清機能低下によって水湿や痰濁が内生する病証です。
治療は健脾益気・化湿利水を基本とし、生活面では飲食の節制と冷え対策が重要となります。
脾を養うことが、全身状態の改善につながります。