虚厥とは

虚厥(きょけつ) とは、正気の著しい虚脱によって生じる厥証で、陰陽・気血が極端に不足し、手足の冷えや意識消失を呈する重篤な病態です。
一般に「気厥・血厥」の中でも虚証に属し、多くは長期の病後や大出血、慢性消耗によって発生します。


原因

  • 大失血: 血が急激に失われ、脈絡を充たせず神明が失養する。
  • 久病消耗: 気血が徐々に虚して、昇降が保てなくなる。
  • 過度の発汗・下痢: 津液・陽気が過剰に失われ、陽虚に陥る。
  • 慢性虚弱体質: 脾腎虚損により気血が生化されず、根本が弱まる。

主な症状

  • 突然の意識消失、昏厥
  • 四肢厥冷、顔色蒼白
  • 呼吸微弱、脈が細く無力
  • 大量出血後の失神、長期の消耗性疾患に伴う昏倒

舌・脈の所見

  • 舌: 淡白、胖嫩、苔少または無苔
  • 脈: 微細欲絶、無力

治療方針

  • 益気回陽: 大補元気、回陽救逆(例:参附湯)
  • 養血復脈: 大量出血後は補血・止血を兼ねる(例:独参湯)
  • 救急処置: 意識障害を伴うため、現代医学的救命対応と併用することが不可欠。

養生・注意点

  • 大病・出血・慢性消耗の回復期は気血を養う食養を心がける。
  • 過労や房労を避け、十分な休養を取る。
  • 虚弱体質では脾腎の補養を重点とする。

まとめ

虚厥は、気血や陽気の急激な損失により発生する虚証性の厥であり、意識消失や四肢厥冷など重篤な症状を呈します。
回陽益気・養血救逆を中心とした緊急の治療が必要で、救命的対応と併せて行うことが重要です。

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