概要
化痰逐瘀(かたん ちくお)は、痰濁と瘀血が互いに結びつき、経絡や臓腑の運行を妨げる病態に対して用いる治法である。
痰は気機阻滞から生じ、瘀は血行の停滞から生じるが、両者が結合すると病が固定化しやすく、慢性化・難治化する特徴をもつ。
主な適応症状
- 癥瘕、腫塊(痰と瘀が互結した腫瘤)
- 癌腫、結節、乳房のしこり
- 心悸・胸痺・胸痛
- 久咳・痰多・痰中に血を伴う
- 舌質紫暗、舌苔膩、脈弦渋あるいは滑渋
主な病機
- 痰濁内生 → 経絡阻滞 → 気血運行不暢 → 瘀血形成
- 瘀血停滞 → 水湿運行不利 → 痰濁生成
- このように「痰と瘀」が互いに影響しあい、痰瘀互結の病態となる。
主な配合法
- 化痰逐瘀+理気止痛:痞塞・脹痛を伴う場合
- 化痰逐瘀+清熱解毒:腫瘤が紅腫熱痛を伴う場合
- 化痰逐瘀+補気養血:久病で気血両虚を兼ねる場合
- 化痰逐瘀+温陽散寒:寒凝による結塊を伴う場合
代表的な方剤
- 血府逐瘀湯合二陳湯(痰瘀互結・胸痺・胸痛)
- 瓜蔞薤白半夏湯合桃紅四物湯(胸痺・心痛・痰瘀阻滞)
- 化痰逐瘀湯(痰瘀結聚による腫塊・癥瘕)
- 通窍活血湯+滌痰湯(頭部の痰瘀阻滞)
臨床でのポイント
- 痰と瘀が互いに生み合い、病を固定化するのが特徴。
- 癥瘕・腫塊・腫瘍など「塊り・結節」の症状に特に多く応用される。
- 舌診では紫暗舌+瘀点+膩苔が典型。
- 治療は「化痰薬」と「活血化瘀薬」を同時に用いる。
- 現代臨床では動脈硬化・腫瘍・慢性炎症などに応用される。
まとめ
化痰逐瘀は、痰濁と瘀血が互いに結合して形成された病理産物を取り除くための治法である。
「痰と瘀の互結」は多くの難治性疾患の根底にあるため、現代中医学でも重要視される治法のひとつ。
応用範囲は婦人科疾患、腫瘍性疾患、心血管疾患まで広く、実際の臨床では補益・理気・清熱などと併用されることが多い。
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