苓姜朮甘湯（りょうきょうじゅつかんとう）

📘 基本情報

項目	内容
方剤名	苓姜朮甘湯（りょうきょうじゅつかんとう）
出典	《金匱要略》
分類	温化水飲・利水健脾
構成生薬	茯苓・乾姜・白朮・甘草
方名の由来	茯苓・乾姜・白朮・甘草の四味から命名。 冷えによる水飲停滞を温め乾かし、利水して除く方意。

🧭 方意（効能と主治）

区分	内容
効能	温中散寒・利水化飲・健脾
主治	体の冷え＋水飲停滞 胸部の水音（心下悸・振水音） 倦怠・息切れ・浮腫・めまい 胃腸虚弱で冷えやすい
病機	寒により脾陽が弱まり、水の運化失調 → 水飲が胸腹に停滞し、心下振水音・倦怠・浮腫などを呈する。 乾姜で温中し、茯苓・白朮で利水健脾、甘草で調和。

💊 生薬構成と作用

生薬	主な作用
茯苓	利水滲湿・健脾・安神
乾姜	温中散寒・温陽化飲
白朮	健脾燥湿・利水
甘草	補中益気・調和諸薬

🌡 臨床的特徴

観点	内容
症状の特徴	・冷え性、特に腹部・四肢の冷え ・水っぽい症状（浮腫・尿量減少・めまい） ・心下部振水音（胃のチャプチャプ音） ・胃腸虚弱、疲労感 舌：淡胖、湿潤、薄白苔 脈：沈細 or 緩弱
体質傾向	脾陽虚・水飲内停型 冷えやすく、むくみやすい、気力低下タイプ

🩺 現代医学的応用

• 慢性胃腸虚弱・食欲不振
• 浮腫・水分代謝異常
• 慢性心不全の補助（動悸・息切れ・水腫状）
• メニエール、めまい（水毒型）
• 冷え性・易疲労

⚖️ 類方鑑別

方剤	特徴
苓姜朮甘湯	脾陽虚＋水飲、冷え・浮腫・振水音
真武湯	より虚が強く、下肢浮腫・冷え・めまいが顕著
五苓散	水湿停滞だが寒証は弱い、口渇あること多い
茯苓飲	水飲＋気逆（胸部つかえ・咳・めまい）
半夏白朮天麻湯	痰湿＋めまい、胃腸虚弱での頭重感

⚠️ 注意点

• 明らかな実熱・口渇・尿黄は不向き
• 冷えと水毒が明確な場合に選択
• 甘草長期は偽アルドステロン症に注意
• 重度心疾患は医師管理下で使用

📖 臨床メモ

• 「冷え＋水が滞る（チャプチャプする）」がキーワード
• 真武湯ほどの虚弱ではなく、やや虚〜中等度
• 利水と同時に温めて動かす点が特徴
• 冷え性で胃が弱く、水分負荷で悪化する例に適応