📘 基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 方剤名 | 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう) |
| 出典 | 『傷寒論』 |
| 分類 | 和解少陽・鎮静安神剤(わかいしょうよう・ちんせいあんしんざい) |
| 保険適用エキス製剤 | 柴胡加竜骨牡蛎湯(ツムラ12、クラシエ12など) |
| 構成生薬 | 柴胡・半夏・茯苓・桂枝・大棗・黄芩・生姜・竜骨・牡蛎・大黄 |
🧭 方意(効能と主治)
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 効能 | 和解少陽、鎮静安神、除煩、通便(精神を安定させ、心身の緊張をゆるめる) |
| 主治 | 神経過敏、不眠、動悸、不安感、驚きやすい、胸脇苦満、便秘など |
| 病機 | 精神的緊張やストレスにより、肝胆の気が鬱結し、少陽気機が乱れて心神不安を生じる。 |
| 現代的適応 | 神経症、不眠症、更年期障害、心身症、高血圧、パニック障害、てんかん、脳卒中後の情緒不安定など |
🌡 臨床的特徴
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 使用目標(証) | イライラ・不安・不眠・胸のつかえ・動悸など精神身体両面の緊張が強い。便秘を伴うことも多い。 |
| 体質傾向 | 中間証〜実証。比較的体力があり、精神的に興奮しやすいタイプ。 |
| 舌診 | 舌質やや紅、苔薄黄または白。 |
| 脈診 | 弦やや数、またはやや実。 |
💊 構成生薬と作用
| 生薬名 | 主要作用 |
|---|---|
| 柴胡(さいこ) | 疏肝解鬱、和解少陽。ストレスや気鬱を解消。 |
| 半夏(はんげ) | 燥湿化痰、降逆止嘔。気の上逆を抑え、痰を除く。 |
| 茯苓(ぶくりょう) | 健脾利湿、安神。心神を落ち着ける。 |
| 桂枝(けいし) | 温経通陽、調和営衛。血行を整え、緊張を和らげる。 |
| 大棗(たいそう) | 補中益気、安神。脾胃を補い、薬性を調和。 |
| 黄芩(おうごん) | 清熱瀉火。肝胆の熱を冷まし、イライラを鎮める。 |
| 生姜(しょうきょう) | 温中和胃、調和諸薬。胃気を整える。 |
| 竜骨(りゅうこつ) | 重鎮安神、潜陽止驚。精神を安定させ、不安・驚きを鎮める。 |
| 牡蛎(ぼれい) | 重鎮安神、斂陰潜陽。緊張を鎮め、動悸・不眠を抑える。 |
| 大黄(だいおう) | 瀉下・清熱。腸内停滞を除き、気血の巡りを改善。 |
🩺 現代医学的な理解
- 抗ストレス・抗不安作用(自律神経調整・GABA系調節)
- 鎮静・催眠作用(不眠・イライラ・興奮を抑制)
- 抗けいれん・抗てんかん作用
- 血圧降下・交感神経抑制作用
- 便通改善・消化機能の正常化
⚠️ 使用上の注意
- 虚弱体質・冷えが強い場合は注意(冷えやすくなることがある)。
- 便秘がない場合は大黄の作用により下痢を起こすことがある。
- 精神興奮が強い場合でも、実熱が著しいときは他方を考慮。
💬 臨床応用例
- 神経症・不眠・パニック障害
- 高血圧・動悸・緊張性頭痛
- てんかん・チック・自律神経失調症
- 更年期障害によるイライラ・のぼせ・不眠
- ストレス性胃腸障害・心身症
🌱 類方鑑別
| 比較方剤 | 相違点 |
|---|---|
| 柴胡桂枝乾姜湯 | 虚証で冷えがあるタイプ。柴胡加竜骨牡蛎湯は実証寄りで興奮・緊張が強い。 |
| 柴朴湯 | 咽喉部のつかえや咳を伴う気鬱タイプ。柴胡加竜骨牡蛎湯は精神的緊張が主体。 |
| 加味逍遙散 | 虚証・情緒不安中心で、鎮静よりも気の巡り改善を重視。 |
📖 メモ
- 「小柴胡湯」に安神・鎮静の竜骨・牡蛎、大黄を加えた構成。
- 心身のバランスを整え、「体の中に怒りや緊張を溜めるタイプ」に適す。
- 精神神経・循環・消化・内分泌のいずれにも応用範囲が広い。
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