加味逍遙散(かみしょうようさん)

📘 基本情報

項目内容
方剤名加味逍遙散(かみしょうようさん)
出典『内外傷弁惑論』
分類疏肝解鬱・清熱養血剤(そかんかいうつ・せいねつようけつざい)
保険適用エキス製剤加味逍遙散(ツムラ24、クラシエ24など)
構成生薬柴胡・当帰・白朮・茯苓・芍薬・甘草・生姜・薄荷・牡丹皮・山梔子


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能疏肝解鬱健脾養血清熱除煩(肝気鬱結と血虚を調え、情緒を安定させる)
主治肝鬱血虚証
月経不順、のぼせ、不眠、いらいら、焦燥感、倦怠感、食欲不振、冷えのぼせなど。
病機精神的ストレスや情緒不安により肝気が鬱結し、
気血の巡りが悪化して熱を生じ、心身の調和が乱れる。
現代的適応更年期障害、月経不順、PMS、不眠、神経症、うつ状態、自律神経失調症など


🌡 臨床的特徴

観点内容
使用目標(証)情緒不安、イライラ、のぼせ、ほてり、頭痛、めまい、胸脇の張り、月経不順などを訴える。
体質傾向中間証〜やや虚証。ストレスに敏感で情緒変化が大きいタイプ。
舌診舌質淡紅またはやや紅、苔薄白〜薄黄。
脈診弦やや細、またはやや数。


💊 構成生薬と作用

生薬名主要作用
柴胡(さいこ)疏肝解鬱。ストレスによる気滞を改善。
当帰(とうき)・芍薬(しゃくやく)養血柔肝。血虚を補い、情緒を安定させる。
白朮(びゃくじゅつ)・茯苓(ぶくりょう)・甘草(かんぞう)・生姜(しょうきょう)健脾益気。消化機能を助け、気血の生成を促す。
牡丹皮(ぼたんぴ)・山梔子(さんしし)清熱除煩。肝鬱による熱を取り、のぼせやイライラを鎮める。
薄荷(はっか)疏散風熱・疏肝解鬱。気分をすっきりさせる。


🩺 現代医学的な理解

  • 抗ストレス・抗不安作用(セロトニン系・HPA軸調整)
  • 自律神経調整作用(交感神経の過剰興奮を抑制)
  • 女性ホルモン調整作用(エストロゲン様効果)
  • 抗炎症・抗酸化作用
  • 血流改善・鎮痛作用(肩こり・月経痛に有効)


⚠️ 使用上の注意

  • 冷えが強く、虚弱で疲れやすい人にはやや刺激が強い場合がある。
  • 口渇やのぼせが少ない場合は、清熱薬が過剰になることがある。
  • 長期服用時は体調に応じて加減する(特に夏季)。


💬 臨床応用例

  • 更年期障害(のぼせ・情緒不安・発汗異常)
  • PMS(月経前症候群)
  • 月経不順・月経痛
  • 自律神経失調症、神経症、不眠、抑うつ状態
  • ストレス性胃腸障害、肩こり、頭痛


🌱 類方鑑別

比較方剤相違点
逍遙散清熱薬(牡丹皮・山梔子)を含まない。熱感やイライラが強くない場合に。
加味帰脾湯より虚証寄りで、不眠・倦怠・心悸などが中心。血虚・心脾両虚を重視。
桂枝茯苓丸瘀血(血行不良)主体で、より実証傾向。


📖 メモ

  • 「逍遙散」に牡丹皮・山梔子を加え、肝鬱化熱を抑えるように調整した方剤。
  • ストレス性ののぼせ・焦燥・不眠・イライラを伴う女性に広く応用される。
  • 「情緒の安定」と「身体の巡り」を同時に整える、代表的な和解肝脾方。

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