📘 基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 方剤名 | 黄連湯(おうれんとう) |
| 出典 | 『傷寒論』 |
| 分類 | 和解少陽剤(わかいしょうようざい)・清熱温中剤 |
| 保険適用エキス製剤 | 黄連湯(ツムラ27、クラシエ27など) |
| 構成生薬 | 黄連・乾姜・人参・桂枝・半夏・大棗・甘草 |
🧭 方意(効能と主治)
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 効能 | 調和寒熱、和胃降逆、止嘔。 |
| 主治 | 胃内に熱がこもり、胃陽が衰えて寒熱錯雑し、悪心・嘔吐・腹痛を呈する。 または、胃炎・胃潰瘍などで上腹部痛・吐き気がある場合。 |
| 病機 | 中焦の虚寒と上焦の熱が錯雑し、胃気が上逆して嘔吐・胸苦しさ・食欲不振が生じる。 |
| 現代的適応 | 慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、胃アトニー、神経性胃炎など。 |
🌡 臨床的特徴
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 使用目標(証) | みぞおちのつかえ、悪心、嘔吐、食欲不振。 口苦、のどの渇きとともに、冷え症状を伴うことがある。 寒熱錯雑の胃腸症状。 |
| 体質傾向 | 中間証〜やや虚証。胃が弱く、ストレスで胃部症状が出やすい人。 |
| 舌診 | やや紅または淡紅、薄白苔~やや黄苔。 |
| 脈診 | やや沈、やや数または緩。 |
💊 構成生薬と作用
| 生薬名 | 主要作用 |
|---|---|
| 黄連(おうれん) | 清熱燥湿、瀉火解毒。胃中の熱を鎮める。 |
| 乾姜(かんきょう) | 温中散寒、回陽通脈。胃中の寒を温めて冷えを除く。 |
| 人参(にんじん) | 補中益気、健脾養胃。胃気を補って消化吸収を助ける。 |
| 桂枝(けいし) | 温経通陽、調和営衛。冷えを散じて気血の巡りを改善。 |
| 半夏(はんげ) | 燥湿化痰、降逆止嘔。胃のつかえや吐き気を鎮める。 |
| 大棗(たいそう)・甘草(かんぞう) | 健脾和中、調和諸薬。胃腸の働きを助け、薬性の偏りを緩和する。 |
🩺 現代医学的な理解
- 胃酸分泌調整作用(過剰・不足のいずれにも対応)
- 胃粘膜保護作用(抗潰瘍作用)
- 抗炎症作用・鎮痛作用
- 制吐作用(嘔気の軽減)
- 自律神経調整作用(ストレス性胃腸障害に)
⚠️ 使用上の注意
- 強い実熱・炎症が顕著な場合は不向き。
- 著しい虚寒(冷え)症状にも不適。
- 胃腸が極度に弱い人では、初期に軽い胃部不快が出ることがある。
- 長期服用は胃酸分泌低下を招くおそれがあるため、経過観察を行う。
💬 臨床応用例
- 慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍
- 胃アトニー、胃神経症
- 逆流性食道炎、胃もたれ、嘔吐
- ストレス性胃痛、緊張性の食欲不振
- 冷えを伴う胃のつかえ・腹部不快感
🌱 類方鑑別
| 比較方剤 | 相違点 |
|---|---|
| 半夏瀉心湯 | 寒熱錯雑のうち、より実証でみぞおちのつかえ・げっぷ・下痢を伴う。 |
| 人参湯 | 胃腸虚寒が中心で、下痢・水様便が主となる。熱症状は伴わない。 |
| 黄芩湯 | 熱性下痢・腸炎など、明確な湿熱・炎症を伴う場合。 |
| 柴胡桂枝湯 | 胸脇苦満や寒熱往来など、少陽病の調和を目的とする場合。 |
📖 メモ
- 『傷寒論』における「胃家不和」を治す代表方。
- 「寒熱錯雑」という概念を明確に表す古典方であり、清熱薬と温中薬を併用。
- 黄連湯は「上熱下寒」「胃熱脾寒」の両面を調整し、胃の機能を整える。
- 現代では、ストレス性胃炎や神経性胃腸障害に非常に適する。
- 食後に胃の不快感・ムカムカがある場合によく用いられる。
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