三黄瀉心湯（さんおうしゃしんとう）

📘 基本情報

項目	内容
方剤名	三黄瀉心湯（さんおうしゃしんとう）
出典	『傷寒論』・『金匱要略』
分類	清熱瀉火・解毒通便剤
構成生薬	黄連・黄芩・大黄
別名	三黄瀉心丸とも

🧭 方意（効能と主治）

区分	内容
効能	瀉火解毒、瀉下通便、清熱止血。
主治	心下の実熱による煩躁、出血、黄疸、便秘、のぼせなど。 具体的には： ・高血圧・不眠・精神不安・イライラ ・口内炎・歯肉炎・鼻出血・皮膚炎・湿疹 ・痔出血・便秘・黄疸など。 体力中等度以上の実熱体質に適応。
病機	心・胃・腸の熱が過剰となり、火熱が上炎して煩躁・不眠・出血を引き起こす。 黄連が心・胃の熱を清し、黄芩が上焦の熱を除き、大黄が下焦の実熱を瀉下して火を導く。 三者が上下三焦の熱を同時に除く構成。

🌡 臨床的特徴

観点	内容
典型的症状	・便秘または硬便 ・顔面紅潮、のぼせ、充血 ・口内炎、歯肉出血、鼻出血 ・精神不安、いらいら、怒りっぽい ・不眠、多夢 ・舌質は紅、苔は黄厚、脈は洪数。
体質傾向	体力中～充実、実熱体質。 顔色赤く、暑がりでのぼせやすい。
舌診	紅、黄厚苔。
脈診	洪数または弦数。

💊 構成生薬と作用

生薬	主要作用
黄連（おうれん）	清熱瀉火、解毒。心・胃の熱を冷ます。
黄芩（おうごん）	清熱燥湿、上焦の火熱を除く。
大黄（だいおう）	瀉下通便、実熱を下行させる。

🩺 現代医学的な理解

• 抗炎症・抗菌作用（口内炎・皮膚炎・歯周病）
• 鎮静作用・自律神経調整作用（不眠・興奮状態に）
• 血圧降下・循環改善作用
• 整腸・下剤作用（便秘改善）
• 抗酸化・肝保護作用

💬 臨床応用例

• 高血圧・のぼせ・不眠・いらいら
• 鼻出血・痔出血・月経過多などの出血傾向
• 便秘を伴う皮膚炎・湿疹・ニキビ
• 口内炎・歯肉炎・咽喉炎
• 肝炎・胆嚢炎・黄疸・酒毒
• 動脈硬化・糖尿病に伴う熱証

⚖️ 類方鑑別

方剤名	鑑別点
黄連解毒湯	熱がより強く、全身の炎症や出血傾向が顕著。大黄を含まない。
大柴胡湯	実熱に加え、少陽病（往来寒熱）や胸脇苦満がある場合。
瀉心湯	黄連・黄芩・半夏・乾姜・人参などを加え、虚実中間証向き。
三物黄芩湯	熱と出血が中心（下焦の湿熱）。

⚠️ 使用上の注意

• 体力虚弱・冷え性・下痢傾向のある人には不向き。
• 大黄による瀉下作用が強いため、下痢時は中止。
• 服用により口の渇きや腹痛が出ることがある。
• 妊婦・授乳婦は医師の指導下で使用。

📖 メモ（臨床的要点）

• 「三黄（黄連・黄芩・大黄）」で上下三焦の熱を一気に瀉す。
• 便秘・出血・のぼせ・不眠を伴う実熱に最適。
• 慢性的なストレス・暴飲暴食・酒毒による「熱盛」に有効。
• 熱を下げながら精神を鎮める“清熱安神方”。