柴胡桂枝乾姜湯（さいこけいしかんきょうとう）

📘 基本情報

項目	内容
方剤名	柴胡桂枝乾姜湯（さいこけいしかんきょうとう）
出典	『傷寒論』
分類	和解少陽・温化水飲剤
保険適用エキス製剤	柴胡桂枝乾姜湯（ツムラ138、クラシエ138など）
構成生薬	柴胡・黄芩・桂枝・乾姜・牡蛎・栝楼根・甘草

🧭 方意（効能と主治）

区分	内容
効能	和解少陽、温中化飲、安神除煩。
主治	少陽病の余邪が裏に入り、水飲（すいいん：体内の冷えた痰水）が停滞したもの。 ・胸脇苦満、微熱、悪寒、口乾、動悸、めまい、不眠、神経過敏など。 ・精神不安や不眠、軽い動悸、のぼせや冷えの混在する症状にも応用される。
病機	少陽の気機が滞り、水飲が内部に停滞して気血の巡りを妨げ、 胸脇部のつかえ、不安・のぼせ・冷えなどが同時に現れる。 柴胡・黄芩が少陽を和解して気機を通じ、 桂枝・乾姜が陽を補い冷えた水飲を温化し、 牡蛎が安神・鎮静し、栝楼根が潤して気を通し、 甘草が調和・緩和する。

🌡 臨床的特徴

観点	内容
典型的症状	・胸脇苦満、軽度の発熱・悪寒。 ・動悸、不安、不眠、めまい。 ・のぼせと冷えが混在する。 ・乾いた咳、口や喉の乾き。 ・舌質は淡紅～紅、薄白苔または少苔、脈は弦細または沈細。
体質傾向	虚実中間証。神経が過敏で、冷えとほてりを併せ持つタイプ。
舌診	淡紅、薄白苔または少苔。
脈診	弦細または沈細。

💊 構成生薬と作用

生薬	主要作用
柴胡（さいこ）	少陽を和解し、気の滞りを除く。
黄芩（おうごん）	少陽の熱を清し、柴胡とともに表裏を調える。
桂枝（けいし）	温陽通陽、血行を促し、水飲を散らす。
乾姜（かんきょう）	温中散寒、冷えた痰水を温化。
牡蛎（ぼれい）	鎮静安神、胸悶・動悸を緩和。
栝楼根（かろこん）	潤しつつ痰を除き、気を通す。
甘草（かんぞう）	諸薬を調和し、虚を補い、咳嗽を鎮める。

🩺 現代医学的な理解

• 自律神経の調整作用（不安・不眠・動悸の改善）
• 軽い抗炎症・鎮静作用（胸部不快・咳嗽）
• 内分泌・ホルモンバランスの調整（更年期症状）
• 循環・水分代謝の改善（のぼせ・冷え・浮腫）

💬 臨床応用例

• 神経症、不眠、不安、軽い抑うつ。
• 更年期障害、自律神経失調症。
• 胸部不快感、動悸、のぼせ、冷え。
• 微熱が続く、口乾、咳、のどの違和感。
• 感冒の治りかけで体がすっきりしない。

⚖️ 類方鑑別

方剤名	鑑別点
小柴胡湯	より実証寄りで、寒熱往来・口苦などが明確な場合。
柴朴湯	胸苦しさ・咽中異物感などが強く、痰が多い場合。
柴胡加竜骨牡蛎湯	心下悸・いらいら・不安が強く、より実証寄り。
柴胡桂枝湯	小柴胡湯と桂枝湯の中間で、表裏の両証がある場合。

⚠️ 使用上の注意

• 冷えが強すぎる場合、または著しい虚証では慎重に使用。
• 熱性の強い実証には不適。
• 慢性病や神経症状で長期使用する際は体質を見極める。

📖 メモ（臨床的要点）

• 小柴胡湯証の派生方で、「水飲」と「虚冷」があるタイプ。
• 胸のつかえ、軽い不安や不眠、のぼせと冷えが混在。
• 少陽病の後期・回復期に用いられることが多い。
• 精神安定作用と体温調整作用を兼ね備える。