柴胡桂枝湯（さいこけいしとう）

📘 基本情報

項目	内容
方剤名	柴胡桂枝湯（さいこけいしとう）
出典	『傷寒論』
分類	和解少陽・解表和裏剤
保険適用エキス製剤	柴胡桂枝湯（ツムラ10、クラシエ10など）
構成生薬	柴胡・黄芩・半夏・人参・甘草・大棗・生姜・桂枝・芍薬

🧭 方意（効能と主治）

区分	内容
効能	和解少陽、解表散寒、調和気血。
主治	半表半裏（少陽）に表証（外感の悪寒・発熱）が残る状態。 ・寒熱往来（悪寒と発熱を繰り返す） ・胸脇苦満、口苦、食欲不振、吐き気 ・頭痛、全身倦怠、微熱、咽喉不快 ・感冒・インフルエンザ・肝機能障害・自律神経失調などで使用される。
病機	外邪が表（体表）にまだ残りつつ、内部の少陽にも波及して半表半裏となる。 柴胡・黄芩で少陽を和し、桂枝・芍薬で表寒を解き、気血を調和させる。 半夏・人参・大棗・生姜・甘草が胃腸機能を整え、全体を調和する。

🌡 臨床的特徴

観点	内容
典型的症状	・悪寒発熱が交互に現れる（寒熱往来） ・胸脇苦満・食欲不振・嘔気・倦怠感 ・頭痛、肩こり、微熱が続く ・感冒後の回復が遅い ・舌質は淡紅～紅、薄白苔、脈は弦または弦緩。
体質傾向	虚実中間証。 やや虚弱で、風邪を引くと長引きやすく、疲れやすいタイプ。
舌診	淡紅、白苔または薄黄苔。
脈診	弦緩または弦細。

💊 構成生薬と作用

生薬	主要作用
柴胡（さいこ）	少陽を和し、気の昇降を調える。
黄芩（おうごん）	清熱燥湿、少陽の熱を鎮める。
半夏（はんげ）	化痰止嘔。嘔気や胸のつかえをとる。
人参（にんじん）	補気健脾。疲労・食欲不振を改善。
甘草（かんぞう）	調和諸薬・鎮痛緩和。
大棗（たいそう）	補中益気・安神。
生姜（しょうきょう）	温中散寒・胃気を整える。
桂枝（けいし）	解表発汗・血行を促す。
芍薬（しゃくやく）	養血柔肝・疼痛緩和。

🩺 現代医学的な理解

• 抗炎症・解熱・免疫調整作用
• 肝機能改善作用（肝炎・胆のう炎など）
• 自律神経安定作用（ストレス反応軽減）
• 消化機能改善、抗アレルギー作用

💬 臨床応用例

• 感冒・インフルエンザ・慢性扁桃炎
• 感冒後の微熱・倦怠感・食欲不振
• 肝機能障害（肝炎、脂肪肝など）
• 胃腸炎、胆のう炎、慢性胃炎
• 自律神経失調、更年期障害、ストレス性不調

⚖️ 類方鑑別

方剤名	鑑別点
小柴胡湯	より少陽証が明瞭で、寒熱往来が強い。表証はない。
桂枝湯	純粋な表証（感冒初期）で、半表半裏の症状がない。
柴胡桂枝乾姜湯	冷え・不安・水滞が強く、胸脇苦満が軽い。
柴朴湯	咽中異物感や痰が多く、神経性の胸苦しさが中心。

⚠️ 使用上の注意

• 熱性疾患の進行期（高熱・実熱）には不向き。
• 体力虚弱で冷えが強い場合は慎重に使用。
• 長期連用は肝機能に注意。

📖 メモ（臨床的要点）

• 小柴胡湯＋桂枝湯＝「少陽＋表証」両方に働く方剤。
• 感冒が治りきらず、微熱・倦怠・胸苦しさが残るときに有効。
• 「和解少陽＋解表」＝体表と内部のバランスをとる。
• 虚実中間で、疲労や胃腸虚弱を伴う感冒後の体調不良に最適。