肝胆鬱熱とは

肝胆鬱熱（かんたんうつねつ） とは、情志の不調（主に怒り・ストレス）などにより肝気が鬱結し、それが長期化して「熱」に転じ、肝および胆にこもった状態を指します。
肝は疏泄（気の流れを調整する）を司り、胆は決断を主る臓ですが、気機が滞ると熱を生じやすく、これが「鬱熱」となって身体や精神に影響を及ぼします。
現代医学では、ストレス性肝胆機能障害、胆嚢炎、神経性不安、情緒障害などに相当することがあります。

原因

• 情志の失調： 怒り・抑うつ・不満などが続き、肝気の鬱滞から熱化する。
• 長期のストレス： 気滞が持続することで気血の流れが悪くなり、内熱を生じる。
• 飲食の不節制： 油っこい・辛い食事や飲酒が肝胆に熱をこもらせる。
• 外邪の影響： 外からの湿熱や熱邪が肝胆に侵入してこもる場合もある。

主な症状

• 脇肋部の張痛、口苦、胸のつかえ
• 怒りっぽい、いらいら、不眠、夢が多い
• 顔面紅潮、目の充血、頭痛、耳鳴り
• 口が苦い、口渇、悪心
• 便秘や尿の黄濁
• 女性では月経不順、経血量少なく暗色、経前症候群（PMS）
• 重症例では黄疸や肝胆疾患様症状を伴う

舌・脈の所見

• 舌： 舌質は紅、苔は黄または黄膩
• 脈： 弦数

代表的な方剤

• 竜胆瀉肝湯（りゅうたんしゃかんとう）： 肝胆実熱による口苦・脇痛・小便短赤・陰部掻痒などに用いる。
• 柴胡疎肝湯（さいこそかんとう）： 肝気鬱結から熱化した軽症例に適する。
• 加味逍遥散（かみしょうようさん）： 肝鬱化火による情緒不安・いらいら・のぼせ・不眠に用いる。
• 柴胡清肝湯（さいこせいかんとう）： 肝胆の鬱熱による湿熱症状（口苦・黄疸傾向など）に使用。
• 黄連解毒湯（おうれんげどくとう）： 熱盛による顔面紅潮・怒りっぽさ・不眠に適する。

養生の考え方

• 怒り・焦りを避け、穏やかな心を保つ
• 油っこい・辛い・アルコールなど熱を助長する飲食を控える
• 十分な睡眠と休息を取り、肝を養う
• 清肝・瀉火作用のある食材（セロリ、菊花、緑豆、苦瓜、クコの実など）を摂る
• 適度な運動や深呼吸で気を巡らせる

まとめ

肝胆鬱熱とは、肝気の鬱滞が熱化して肝胆にこもり、情緒不安・口苦・脇痛・顔面紅潮などを引き起こす病態です。
治療・養生の基本は「疏肝理気」「清肝瀉火」であり、気の流れと熱のバランスを整えることが重要です。