湿熱犯肝胆とは

湿熱犯肝胆（しつねつはんかんたん） とは、外から侵入した湿熱、または飲食や情志などの内的要因により体内に生じた湿熱が、肝胆にこもって機能を阻害する病態を指します。
湿と熱が結びつくことで粘滞性が強く、病が長引きやすく、胆汁の排泄障害や黄疸、口苦、脇肋部の張痛などが特徴です。
現代医学的には「胆嚢炎」「胆石症」「肝炎」「湿熱性皮膚疾患」などに相当することがあります。

原因

• 外感湿熱： 高温多湿な環境や湿熱の外邪が体内に侵入し、肝胆に停滞する。
• 飲食の不節制： 油っこい・辛い・甘い食事やアルコールの摂取が湿熱を生む。
• 情志の失調： ストレスや怒りにより肝気が鬱結し、熱を帯びて湿と結合する。
• 脾虚による湿生： 脾の運化失調により湿が生じ、それが熱と結び肝胆に伝わる。

主な症状

• 脇肋部の張痛、口苦、口粘
• 口が苦く、食欲不振、胸のつかえ
• 嘔気、悪心、黄色い尿
• 体が重だるい、倦怠感
• 黄疸（皮膚・眼球が黄）、尿の濃染
• 女性では帯下が黄濁し臭いを伴う
• 舌苔が黄膩で、口臭や苦味が強い

舌・脈の所見

• 舌： 舌質は紅、苔は黄膩または厚黄
• 脈： 弦数または滑数

代表的な方剤

• 茵蔯蒿湯（いんちんこうとう）： 肝胆の湿熱による黄疸・口苦・尿黄などに用いる。
• 竜胆瀉肝湯（りゅうたんしゃかんとう）： 肝胆実熱による口苦・陰部掻痒・尿短赤に適する。
• 柴胡清肝湯（さいこせいかんとう）： 肝胆の湿熱と気滞が併存し、脇痛やいらいらを伴う場合に用いる。
• 温胆湯（うんたんとう）： 湿痰が胆にこもり、不眠・不安・胸のつかえを呈する場合に用いる。
• 茵陳五苓散（いんちんごれいさん）： 湿熱による黄疸・尿利不利・むくみなどに適する。

養生の考え方

• 脂っこい・辛い・甘い・アルコールなど湿熱を助長する食事を控える
• 新鮮な野菜や苦味のある食材（ゴーヤ、セロリ、菊花、緑豆など）を摂取する
• 規則正しい生活と十分な睡眠で肝胆を休ませる
• ストレスを減らし、肝気の鬱滞を防ぐ
• 湿気の多い環境を避け、適度な運動で発汗を促す

まとめ

湿熱犯肝胆とは、湿と熱が結びついて肝胆にこもり、気機の疏泄や胆汁の流れを妨げることで、黄疸・口苦・脇痛・倦怠などを呈する病態です。
治療・養生の基本は「清熱利湿」「疏肝理気」であり、飲食の節制と情志の安定が肝胆の調和を保つ鍵となります。