桂枝加苓朮附湯（けいしかりょうじゅつぶとう）

📘 基本情報

項目	内容
方剤名	桂枝加苓朮附湯（けいしかりょうじゅつぶとう）
出典	『金匱要略』
分類	温経散寒・利湿除痺剤
保険適用エキス製剤	桂枝加苓朮附湯（ツムラ125、クラシエ125など）
構成生薬	桂枝・芍薬・生姜・大棗・甘草・茯苓・白朮・附子

🧭 方意（効能と主治）

区分	内容
効能	温経散寒、利湿除痺、調和営衛。
主治	冷え・湿による関節痛・神経痛・浮腫・しびれ・筋肉痛。 慢性の冷えや水滞を伴う疼痛・倦怠。
病機	陽虚により寒湿が内停し、経絡が阻滞して痛み・しびれ・浮腫を生ずる。 桂枝湯で営衛を調え、茯苓・朮で湿を除き、附子で陽を回復する。
現代的適応	関節リウマチ、神経痛、腰痛、四肢冷感、浮腫、変形性関節症、冷え性、しびれなど。

🌡 臨床的特徴

観点	内容
使用目標（証）	体力中等度またはやや虚。 手足の冷え、関節痛・こわばり・しびれ・むくみを訴える。 冷えると症状が悪化し、温めると軽減する。
体質傾向	冷え性、水分代謝が悪く、湿が滞りやすい体質。
舌診	淡白舌、白苔、湿潤。
脈診	沈遅または弱。

💊 構成生薬と作用

生薬名	主要作用
桂枝	温経散寒、発汗解表、血行促進。
芍薬	養血柔肝、止痛緩急。
生姜	温中散寒、健胃。
大棗	補中益気、調和諸薬。
甘草	調和諸薬、緩急止痛。
茯苓	利水滲湿、健脾、除湿。
白朮	健脾燥湿、除湿止痛。
附子	温陽散寒、止痛、回陽救逆。

🩺 現代医学的な理解

• 抗炎症作用：関節炎や神経痛の疼痛を軽減。
• 末梢循環改善：冷えやしびれを改善。
• 利尿作用：水分代謝を促進し、浮腫を軽減。
• 自律神経調整：冷え・倦怠などの全身不調に有効。

⚠️ 使用上の注意

• 附子を含むため、過量服用・長期使用に注意。
• 熱感・発赤・炎症が強い実証タイプには不適。
• 著しい虚弱・胃腸虚寒がある場合は用量に配慮。

💬 臨床応用例

• 関節痛（特に冷えると悪化するもの）。
• 手足の冷え・しびれ・むくみ。
• 神経痛、坐骨神経痛、腰痛。
• 慢性の浮腫や倦怠感。
• 変形性関節症、リウマチ性疼痛。

🌱 類方鑑別

比較方剤	相違点
桂枝加朮附湯	寒湿による関節痛中心で、水滞が軽い場合。
真武湯	冷えと水滞が強く、浮腫・めまい・下痢を伴う場合。
防已黄耆湯	水太り・汗かき・上半身の浮腫傾向がある場合。
独活寄生湯	慢性関節痛で体力が低下している場合。

📖 メモ

• 桂枝湯に茯苓・白朮・附子を加え、冷えと水湿を取り除く方剤。
• 「冷えて痛む・むくむ・重だるい」タイプに最適。
• 温経・利水・除湿・止痛の4作用を兼ね備える。
• 慢性の冷え性・関節痛の基本処方としてよく用いられる。