女神散（にょしんさん）

📘 基本情報

項目	内容
方剤名	女神散（にょしんさん）
出典	近世方（『勿誤薬室方函口訣』など）
分類	清熱安神・理気調経剤
構成生薬	当帰（とうき）・川芎（せんきゅう）・芍薬（しゃくやく）・茯苓（ぶくりょう）・蒼朮（そうじゅつ）・黄芩（おうごん）・山梔子（さんしし）・香附子（こうぶし）・陳皮（ちんぴ）・柴胡（さいこ）・薄荷（はっか）・甘草（かんぞう）
方名の由来	主として女性（「女神」）の情緒不安・月経不順・更年期障害など、心身の調和を整えることを目的とするため。

🧭 方意（効能と主治）

区分	内容
効能	清熱安神・理気調経・健脾和胃
主治	心肝火旺・気滞血瘀による 頭痛・めまい・のぼせ・不眠・いらいら・憂うつ・月経不順・更年期障害 など。 また、胸脇部の張り感や動悸、不安感を伴うことが多い。
病機	精神的ストレスや感情の抑圧により、肝気が鬱結し、 これが心火を生じ、気血の流れが乱れて神志を擾乱する。 結果として、心肝の熱と気滞が生じ、情緒不安・不眠・月経異常などを発す。

💊 構成生薬と作用

生薬	主な作用
当帰・川芎・芍薬	養血・活血し、血行を整え月経を調える。
香附子・陳皮・柴胡	理気解鬱・疏肝解鬱。ストレスによる気の滞りを解消。
茯苓・蒼朮	健脾滲湿し、脾胃の働きを整える。
黄芩・山梔子	清熱瀉火・鎮静作用。心肝の熱を冷ます。
薄荷	清熱解鬱・気をめぐらす。精神をすっきりさせる。
甘草	調和諸薬・緩和作用。

🌡 臨床的特徴

観点	内容
症状の特徴	いらいら・不眠・めまい・頭痛・胸脇の張り・顔のほてり。 月経不順・月経痛・PMS・更年期障害など。 心悸亢進・のぼせ・情緒不安・多夢を伴うこともある。
体質傾向	やや実証〜中間証。 気滞・血瘀・軽度の熱を持つ傾向。
舌象・脈象	舌：紅、薄黄苔または薄白苔。 脈：弦やや数。

🩺 現代医学的応用

• 更年期障害（情緒不安・のぼせ・不眠）
• PMS（月経前症候群）
• 自律神経失調症
• 神経症・不安障害
• うつ傾向・ヒステリー体質
• 不眠症・頭痛・めまい

⚖️ 類方・比較

方剤	特徴・鑑別点
加味逍遙散	体力中等・血虚傾向が強い場合。女神散よりやや虚証向き。
柴胡加竜骨牡蛎湯	実証で動悸・不眠・焦燥が強い場合。
温清飲	血熱・皮膚疾患を伴う場合。
加味帰脾湯	心脾両虚で、不安・不眠・倦怠が主となる場合。

⚠️ 使用上の注意

• 虚弱体質や冷えが強い場合は不向き。
• 精神症状が強い場合は他剤との併用を検討。
• 体力のない場合は加味逍遙散などへの転方を考慮。

📖 メモ（臨床要点）

• 女性の「心肝火旺」「気鬱化熱」に用いる代表方。
• 情緒不安・のぼせ・不眠を伴う更年期・月経不順に適す。
• 精神面と月経リズムの両方を整える作用がある。
• いわば「女性の自律神経調整方」。