加味帰脾湯(かみきひとう)

📘 基本情報

項目内容
方剤名加味帰脾湯(かみきひとう)
出典『医方集解』など(帰脾湯に柴胡・山梔子を加味)
分類補気養血・安神清熱剤(ほきようけつ・あんしんせいねつざい)
保険適用エキス製剤加味帰脾湯(ツムラ137、クラシエ137など)
構成生薬人参・黄耆・白朮・当帰・茯苓・遠志・酸棗仁・龍眼肉・木香・大棗・甘草・生姜・柴胡・山梔子


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能補気養血健脾安神清熱除煩(心脾両虚に清熱を加え、気血を補い心神を安定させる)
主治心脾両虚に熱を兼ねる症。
不眠、健忘、動悸、不安、倦怠感、食欲不振、顔色不良、のぼせやほてりを伴う。
病機思慮過多・心労・過労により、脾が弱って気血が不足し、心への栄養が失われる。これに加えて、気滞・化熱が生じる。
現代的適応不眠症、神経症、更年期障害、抑うつ状態、貧血、心身疲労、胃腸虚弱、冷えのぼせなど


🌡 臨床的特徴

観点内容
使用目標(証)不眠・動悸・不安・健忘・食欲不振・倦怠・のぼせ・焦燥感。
特に「疲れているのに眠れない」タイプ。
体質傾向中間証〜やや虚証。心身ともに疲れやすいが、精神的ストレスを受けやすいタイプ。
舌診淡紅またはやや紅、苔薄白。舌尖が赤いことが多い。
脈診細または弱、やや数。


💊 構成生薬と作用

生薬名主要作用
人参・黄耆・白朮・甘草・大棗・生姜補気健脾。消化吸収を助け、気力を補う。
当帰・龍眼肉・酸棗仁・遠志養血安神。血を補い、心神を落ち着ける。
茯苓健脾利湿・安神。水滞を除き、心神を安定。
木香行気醒脾。胃腸の働きを促進し、停滞を除く。
柴胡・山梔子疏肝解鬱・清熱除煩。精神的ストレスやのぼせを鎮める。


🩺 現代医学的な理解

  • 抗ストレス・抗うつ作用(セロトニン系調整)
  • 自律神経調整作用(交感・副交感神経のバランス改善)
  • 鎮静・催眠作用(不眠・不安に有効)
  • 造血・免疫調整作用(貧血傾向の改善)
  • 消化吸収促進作用(虚弱体質改善)


⚠️ 使用上の注意

  • 体力が極端に低い場合は刺激が強いことがある。
  • のぼせ・イライラが強くない場合は、清熱成分が過剰になることもある。
  • 冷えが強い場合は温補性方剤を考慮する。


💬 臨床応用例

  • 心身症、不眠症、神経症、うつ状態
  • 更年期障害、月経不順、PMS
  • 貧血、健忘、疲労倦怠、食欲不振
  • 冷えのぼせ、焦燥感、情緒不安定
  • 胃腸虚弱で精神不安を伴う症状


🌱 類方鑑別

比較方剤相違点
帰脾湯清熱薬(柴胡・山梔子)を含まない。のぼせやイライラがない純粋な心脾両虚に。
加味逍遙散より肝鬱・情緒不安中心で、補血・補気の力は弱い。
酸棗仁湯不眠中心で虚熱が強くない場合に用いる。


📖 メモ

  • 帰脾湯」に柴胡・山梔子を加え、情緒不安やのぼせを抑えるよう調整した方剤。
  • 疲労・不眠・イライラ・のぼせなど、心身両面のバランス失調に適す。
  • 「虚と熱」「心と脾」「精神と身体」を同時に整える典型方。

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