概要
活血止痛（かっけつしつう）とは、瘀血（血の停滞）を除き血行を回復させることで、瘀血性の疼痛を緩和・消除する治法である。 瘀血は血の循環不良や停滞により局所に結聚し、刺痛・固定痛・腫塊・月経痛・産後腹痛などを生じる。 活血止痛法は、活血化瘀（血を巡らせる）と理気・消腫・止痛を組み合わせ、痛みの原因である瘀血を除去して機能回復を図る。
主な適応症状
- 刺すような痛み・固定性の疼痛（局所が決まって動かない痛み）
- 月経痛（経血に塊を伴う・色が暗い）・月経不順
- 産後腹痛・悪露不絶
- 外傷後の腫痛（打撲・捻挫・瘀血性の疼痛）
- 慢性頭痛・胸痛・腰痛で瘀滞を疑う場合
- しこり・瘢痕の硬結・血行不良に伴う冷感
これらは瘀血が経絡や臓腑に停滞し、気血の流れを阻害することで現れる臨床像である。
主な病機
- 気血運行不利 → 血の凝滞（瘀血） → 局所疼痛。
- 外傷や寒邪により血行が阻害 → 瘀血形成 → 刺痛・腫塊。
- 長期慢性病や産後の気虚血瘀 → 瘀血定着 → 持続痛。
したがって活血止痛法は、活血化瘀して血行を回復し、同時に理気や消腫を行って痛みを取り除くことを目的とする。
主な配合法
- 活血＋理気：気滞が伴う痛み（例：桃核承気湯の応用）。
- 活血＋止痛（鎮痛薬味）：強い刺痛や急性痛に延胡索・乳香没薬などを併用。
- 活血＋補血：血虚を伴う瘀血（慢性痛や産後）には当帰・熟地などを加える。
- 活血＋清熱：瘀血に熱象（熱感・発赤）があれば清熱薬を併用。
- 活血＋通絡：四肢の痺れや運動制限があるときは通絡薬を配合する。
代表的な方剤・生薬
- 桃核承気湯（とうかくじょうきとう）：下焦の瘀血による下腹刺痛・便秘に用いる。
- 桂枝茯苓丸（けいしぶくりょうがん）：月経痛・お血の体質改善に広く用いられる。
- 血府逐瘀湯（けっぷちくおとう）：胸部・頭部の瘀血症状（胸痛・頭痛・イライラ）に適応。
- 身痛逐瘀湯（しんつうちくおとう）：慢性関節痛・筋痛・瘀血型の疼痛に用いる。
- 延胡索（えんこさく）：鎮痛作用が強く、刺痛の緩和に重要。
- 丹参・川芎・桃仁・紅花：代表的な活血薬で、血行改善と瘀血除去に用いる。
臨床でのポイント
- 疼痛の性状（刺痛か鈍痛か・固定性か移動性か）で瘀血の関与を判定する。
- 妊婦には原則避ける（通経・駆瘀作用があり流産リスクを高める可能性）。
- 過度の活血は出血傾向を助長するため、出血性素因がある者は慎重投与。
- 慢性例では補血と併用して瘀血を除きつつ栄養を回復させる。
- 外傷初期は冷却＋活血（外用）を使い分け、感染や化膿が疑われるときは清熱解毒を考慮する。
まとめ
活血止痛法は、瘀血を主因とする疼痛に対して、活血化瘀・理気止痛・消腫通絡を組み合わせて疼痛を軽減する治法である。 代表方剤は桃核承気湯・桂枝茯苓丸・血府逐瘀湯・身痛逐瘀湯などで、臨床では妊婦・出血傾向・熱象の有無を考慮して用いるのが要点である。
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