概要
潤燥(じゅんそう)は、燥邪や陰液不足によって乾燥した体内環境を潤し、津液を回復させる治法である。 「燥」は六淫の一つであり、秋季に多く、皮膚・粘膜・肺・腸などの乾燥症状を引き起こす。 また、長期の陰虚や津液消耗によっても内燥を生じる。
潤燥法では、滋陰養液・潤肺止咳・潤腸通便・養血生津などの薬を用いて、 乾燥による不調を和らげ、臓腑機能の円滑化をはかる。
主な適応症状
- 口・咽・鼻の乾燥
- 皮膚の乾燥・かゆみ・ひび割れ
- 空咳・痰少・咽喉の痛み
- 便秘(乾燥便)
- 口渇・尿少・舌紅少津・脈細数
主な病機
- 外感燥邪:秋季の乾燥した気候により津液が損傷され、肺燥・咳嗽を生じる。
- 陰虚内燥:久病・熱病・過労・虚労により陰液が損傷し、内燥が形成される。
- 血虚生燥:血不足により肌膚・爪髪が潤わず、乾燥や痒みが出現する。
- 腸燥津枯:津液不足により大便が乾き、排便困難を生じる。
- 燥熱傷津:燥邪と熱邪が合して津液を消耗し、皮膚や粘膜の乾きを悪化させる。
主な配合法
- 潤燥+養陰:陰虚に伴う内燥に(例:沙参麦門冬湯)。
- 潤燥+清熱:燥熱による咳嗽・咽痛に(例:清燥救肺湯)。
- 潤燥+潤肺止咳:乾咳・痰少・咽乾に(例:養陰清肺湯)。
- 潤燥+潤腸通便:腸燥便秘に(例:麻子仁丸)。
- 潤燥+養血:血虚性の皮膚乾燥・瘙痒に(例:四物湯+地黄・麦門冬)。
- 潤燥+益胃生津:胃陰不足・口渇・食少に(例:益胃湯)。
代表的な方剤
- 清燥救肺湯(せいそうきゅうはいとう):潤肺清熱。燥熱による乾咳・口渇に。
- 沙参麦門冬湯(しゃじんばくもんどうとう):養陰潤燥。肺陰虚の乾咳に。
- 養陰清肺湯(よういんせいはいとう):滋陰清熱・潤肺止咳。咽乾・痰少に。
- 益胃湯(えきいとう):養陰益胃・生津止渇。口乾・食少・体虚に。
- 麻子仁丸(ましにんがん):潤腸通便。腸燥便秘・老人便秘に。
- 増液湯(ぞうえきとう):養陰増液・潤燥通便。津枯便秘に。
臨床でのポイント
- 潤燥法は、津液を補い乾きを除くことを主眼とする。
- 外感の燥邪には、清熱・宣肺を併用して肺気を通す。
- 内燥(陰虚)では、滋陰・養血を合わせて潤いを保つ。
- 便秘を伴う場合は、潤腸薬(麻子仁・郁李仁・蜂蜜など)を配合する。
- 長期の乾燥症では、養陰益津を中心に継続的な補養が有効である。
まとめ
潤燥は、燥邪や津液不足により乾燥した身体を潤し、陰液を回復させる治法である。 外燥には清熱潤肺を、内燥には滋陰養液を主とし、便秘には潤腸を併用する。 清燥救肺湯・沙参麦門冬湯・益胃湯などが代表方で、 秋燥・乾咳・皮膚乾燥・便秘などに広く応用される。
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