柴陥湯(さいかんとう)

📘 基本情報

項目内容
方剤名柴陥湯(さいかんとう)
出典『金匱要略』
分類和解少陽清熱化痰剤
保険適用エキス製剤柴陥湯(ツムラ128、クラシエ128など)
構成生薬 柴胡・黄芩・半夏・生姜・栝楼根・人参・大棗


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能和解少陽清熱化痰寛胸下気
主治少陽病に痰熱が結して、胸中がつかえ、咳嗽・吐逆を伴うもの。
・胸苦しさ、咳、痰が切れにくい、口苦、喉の乾き、悪心、食欲不振など。
・または気分の不安定、胸悶感、動悸などを伴うこともある。
病機 半表半裏の少陽に痰熱が内結し、胸中に鬱して気が通じないため、
胸満・咳嗽・嘔吐・心下痞・口苦などが起こる。
柴胡・黄芩が少陽を和解して清熱し、半夏・栝楼根が痰を化して胸を開き、
人参・生姜・大棗が脾胃を調え中気を助ける。


🌡 臨床的特徴

観点内容
典型的症状 ・胸苦しさ、胸のつかえ、痰が多い、咳嗽、吐き気。
・口苦、喉の乾き、食欲不振。
・気分がふさぐ、動悸、不眠を伴うことも。
・舌質は紅、黄苔、脈は弦滑または数。
体質傾向 やや実証寄りで、熱がこもりやすく、痰を生じやすい体質。
舌診紅、黄苔。
脈診弦滑または数。


💊 構成生薬と作用

生薬主要作用
柴胡(さいこ)少陽を和解し、気の滞りを除く。
黄芩(おうごん)清熱燥湿。少陽の熱をさます。
半夏(はんげ)燥湿化痰・降逆止嘔。
栝楼根(かろこん)清熱化痰・寛胸散結。胸中の痞塞を開く。
人参(にんじん)補中益気。脾胃の虚を補い、薬力の調和を図る。
生姜(しょうきょう)温中・化痰・嘔気を鎮める。
大棗(たいそう)補脾・和中。諸薬の調和を助ける。


🩺 現代医学的な理解

  • 抗炎症作用、去痰・鎮咳作用。
  • 消化機能改善作用、胃酸分泌調整作用。
  • 自律神経調整作用(胸部不快・不安・動悸の改善)。
  • 呼吸器疾患・胃腸障害・心因性の胸部症状への応用。


💬 臨床応用例

  • 慢性気管支炎、気管支喘息、咳嗽。
  • 胸部圧迫感、胸苦しさ、動悸。
  • 胃炎、胃もたれ、悪心、嘔吐。
  • 神経性胃炎、ストレス性胸部症状。
  • 咳や痰が残る感冒の回復期。


⚖️ 類方鑑別

方剤名鑑別点
小柴胡湯半表半裏の調整が主で、痰や胸満が強くない場合。
半夏瀉心湯心下痞が主で、胸苦しさより胃部のつかえが中心。
柴朴湯柴胡+半夏厚朴湯の構成で、胸苦しさや咽中異物感が主。
小陥胸湯熱痰が胸中に結して痛み・咳が強い場合。


⚠️ 使用上の注意

  • 虚証で冷えが強い人には不向き。
  • 熱性の咳嗽で痰が黄・粘稠なときに適する。
  • 過度な乾燥・のぼせ・口渇が強い場合は他剤を考慮。


📖 メモ(臨床的要点)

  • 小柴胡湯証に「痰」が加わったもの。
  • 胸中の痞塞感・咳・嘔気が特徴。
  • 呼吸器と消化器の症状が併発する際に適す。
  • 「和解少陽+化痰清熱」の代表方剤。

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