養血滋陰とは

養血滋陰(ようけつじいん)

概念

養血滋陰(ようけつじいん)とは、血を補い、陰を滋養して身体の虚熱や乾燥を鎮める治法である。 「血」は五臓を養い精神を安定させる基礎であり、「陰」は津液・血液・精などの総称で、身体を潤し熱を制御する役割をもつ。 したがって養血滋陰法は、血虚と陰虚が併存する場合に用いられ、特に慢性病後・虚労・更年期・熱病後などでよく見られる。


所属

補益法の一種(養血・滋陰の併用)。


効能

  • 養血血を補い、心肝を滋養する。
  • 滋陰陰液を増し、虚熱・乾燥を鎮める。
  • 安神血陰の充実により、心神を安定させる。
  • 潤燥肌・粘膜・髪などの乾燥を改善する。

主治

  • 血虚と陰虚が併存する虚労・慢性病後
  • 顔色萎黄・唇色淡白・手足のほてり
  • めまい・動悸・不眠・多夢
  • 潮熱・盗汗・口乾・咽喉乾燥
  • 皮膚乾燥・毛髪の艶消失・月経量少または閉経
  • 舌紅・苔少・脈細数

病機解説

  • 血虚脾虚・思慮過多・失血・慢性病後などにより血の生化不足。
  • 陰虚熱病・過労・虚火により津液が損耗。
  • 血と陰は相互に依存するため、血虚が進むと陰も損われ、陰虚が進むと血も養われない。
  • したがって治法は養血と滋陰を兼ねて気血津液を調和させることにある。

代表方剤

  • 当帰養血湯(とうきようけつとう):血虚による虚熱・倦怠・顔色不良に。
  • 帰脾湯(きひとう):心脾両虚・血虚・不眠・健忘に。
  • 滋陰養栄湯(じいんようえいとう):陰血両虚による虚労・衰弱に。
  • 四物湯(しもつとう):養血調血の基本方。血虚に広く応用。
  • 六味地黄丸(ろくみじおうがん):腎陰虚を補い、滋陰養血に兼用される。

応用

  • 慢性疾患・更年期障害・貧血・虚弱体質。
  • 熱病後の陰血損傷による口渇・潮熱・倦怠。
  • 皮膚や粘膜の乾燥、月経異常、不眠・不安など。
  • 他の補益法(補気・補腎)と併用して全身の虚を改善する。

使用上の注意

  • 湿滞・痰濁がある場合は、滋膩性の薬を慎用。
  • 外感や熱毒のある時は用いない。
  • 胃腸虚弱者では、脾を健やかにする薬を併用する。

まとめ

養血滋陰法は、血を補い陰を養って虚熱を鎮め、全身を滋潤・安養する治法である。 代表方剤は四物湯・滋陰養栄湯・当帰養血湯などで、血虚陰虚の双方に対応し、 慢性虚弱・虚労・更年期障害・皮膚乾燥などに広く応用される。

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