概念
調和水道（ちょうわすいどう）とは、体内の水液の生成・運行・排泄を調整し、水分代謝の均衡を回復させる治法である。 「水道」とは、津液が脾・肺・腎の協調により体内を循環し、余分な水分が膀胱を経て排泄される経路を指す。 この経路の失調により、浮腫・小便不利・口渇・頭重・下痢・めまいなどの症状が生じるため、調和水道法では、脾・肺・腎の機能を整え、水液代謝を円滑にすることを目的とする。
所属
調和水道法は、利水法および健脾法・補腎法に関連し、主に水湿停滞・水道不利・腎気不化・脾肺失調などの病機に用いられる。
効能
- 水液の生成・運行・排泄を調整する。
- 脾・肺・腎の機能を協調させる。
- 浮腫や尿量異常を改善する。
- 水湿の停滞を除き、体の重だるさを解消する。
- 津液の布散を回復し、口渇や乾燥を防ぐ。
主治
- 水湿停滞：顔や下肢の浮腫、尿量減少、体の重だるさ。
- 水道不利：小便不利、腹満、下痢、頭重。
- 脾腎陽虚：水分代謝の低下、冷え、浮腫、尿少。
- 肺失宣粛：咳・痰・浮腫・尿量異常。
- 腎気不化：排尿障害、頻尿、夜間尿、下半身のむくみ。
病機
水道の調節は、脾・肺・腎の協同作用によって維持される。 脾は水穀を運化し、肺は水を上に布散し、腎は気化を主り水を下に通す。 いずれかの機能が失調すると水の運行が乱れ、上焦・中焦・下焦に湿・水が停滞する。 調和水道法は、これら三臓の機能を調え、水の流れを正常化させることで、津液代謝の均衡を回復する。
代表方剤
- 五苓散（ごれいさん）：水湿停滞による浮腫、頭重、尿少、嘔吐。
- 猪苓湯（ちょれいとう）：水滞・尿量異常・口渇を伴う証。
- 真武湯（しんぶとう）：腎陽虚による水滞、下痢、浮腫、めまい。
- 防己黄耆湯（ぼういおうぎとう）：表虚水腫、汗出、下肢の浮腫。
- 苓桂朮甘湯（りょうけいじゅつかんとう）：水飲内停によるめまい・動悸・尿少。
- 茯苓沢瀉湯（ぶくりょうたくしゃとう）：脾虚水湿によるめまい・浮腫・尿量異常。
臨床応用
- 浮腫・むくみ・尿量減少。
- めまい・頭重感・倦怠・下痢。
- 慢性腎炎・ネフローゼ症候群などの水滞性疾患。
- 気象病・天候変化による体調不良（湿証）。
- 肺水腫・心不全などに伴う水道失調の補助療法。
使用上の注意
- 陰虚や津液不足による口渇・乾燥には適さない。
- 過度の利尿による体液消耗に注意する。
- 実熱を伴う水滞には、清熱利湿薬と併用する。
- 虚証では温補薬を併用して気化を助ける。
まとめ
調和水道法は、脾・肺・腎の機能を整えて水液の運行を円滑にし、水湿停滞を除く治法である。 代表方剤は五苓散・真武湯・防己黄耆湯・苓桂朮甘湯などで、利水・健脾・温腎・化湿が要点となる。 浮腫・尿量異常・めまい・下痢など、水分代謝の異常に基づく症候に広く応用される。
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