概念
温裏（おんり）とは、体内深部（裏）に停滞した寒邪や、陽気不足による虚寒状態を温めて改善する治法である。
脾胃・腎を中心に、陽気の不足や寒邪の侵入によって、消化機能低下、腹痛、下痢、四肢冷感、倦怠などが生じる。
温裏法は、体内を温め、陽気を回復させ、気血水の運行と臓腑機能を正常化させる。
所属
主に温裏法は補陽法・散寒法の一部であり、裏寒証・陽虚内寒・寒積停滞に用いる。
効能
- 体内の寒邪を温め散らす。
- 陽気を補い、臓腑機能を回復させる。
- 脾胃の運化機能を強める。
- 水穀の消化吸収を促し、下痢を止める。
- 四肢の冷え、倦怠を改善する。
主治
病機
寒邪の侵入、または陽虚により臓腑の温煦作用が低下すると、気血水の運行障害が起こり、
腹痛・下痢・嘔吐・冷え・倦怠・水湿停滞などの症状が生じる。
温裏法は、陽気補益・散寒・温中祛寒を図り、臓腑機能を回復させる。
代表方剤
- 理中丸（りちゅうがん）：脾胃虚寒、下痢、食欲不振、嘔吐。
- 四逆湯（しぎゃくとう）：四肢厥冷、ショック様虚脱状態。
- 附子湯（ぶしとう）：陽虚腹痛、冷え、関節痛。
- 人参湯（にんじんとう）：胃腸虚寒、下痢、嘔吐、倦怠。
- 真武湯（しんぶとう）：腎陽虚による浮腫、下痢、冷え。
臨床応用
- 慢性胃腸虚弱、冷えによる下痢・嘔吐。
- 低体温、寒がり、四肢冷感。
- 慢性疲労、倦怠。
- 腎陽虚によるむくみ、頻尿。
- 寒冷刺激で悪化する腹痛や腰痛。
使用上の注意
- 熱証・内熱・口渇・便秘がある場合は不適。
- 陰虚火旺には禁忌、必要に応じて滋陰薬併用。
- 附子など温熱薬は量を慎重に調整。
- 高熱・炎症性疾患には使用しない。
まとめ
温裏法は、寒邪や陽虚による体内の冷え・消化機能低下を温めて改善する治法である。
代表方剤は理中丸・四逆湯・真武湯などで、温中・回陽・散寒が治療の要点となる。
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