熱邪上逆とは

■ 概要

熱邪上逆とは、体内に生じた熱(火邪)が上焦・頭面部・心神を逆流的に犯す状態を指す中医学の病証です。
熱が上へと昇りすぎ、頭部・咽喉・胸部・精神活動に影響し、のぼせ、頭痛、めまい、怒りっぽさなどの症状を引き起こします。


■ 主な症状

  • 頭痛・頭重・のぼせ
  • 顔面紅潮、目の充血、口渇、咽乾
  • 胸のつかえ、いら立ち、怒りやすい
  • 耳鳴、めまい、煩躁、不眠、悪夢
  • 口苦、苦悶感、心悸亢進、動悸
  • 舌:紅、苔黄または乾燥
    脈:数、弦数、滑数

■ 病因

  • 外感熱邪(風熱・暑熱など)
  • 七情内傷(怒・焦燥などによる肝鬱化火)
  • 暴飲暴食(辛・酒・油物過多による湿熱化火)
  • 長期の陰虚・津液不足による虚熱化火
  • 痰湿が化熱し、上に擾乱(痰火上擾)

■ 病理機転

  • 熱が体内に鬱結 → 火熱が上逆し、頭部・心神を攪乱
  • 気機が上逆し、煩躁・不眠・めまいを発現
  • 肝火上炎 → 頭痛、目充血、怒りっぽさ
  • 心火亢盛 → 心悸、口渇、口苦、口瘡

■ 治法

清熱瀉火平肝潜陽安神定志


■ 代表的な方剤

  • 黄連解毒湯:強い実火・煩躁・口苦
  • 竜胆瀉肝湯:肝火上炎による頭痛・怒り・目赤
  • 釣藤散:肝陽上亢による頭痛・眩暈
  • 天王補心丹:陰虚火旺・不眠・煩躁
  • 朱砂安神丸:心火擾神で眠れず動悸

■ 弁証の要点

  • のぼせ、頭痛、目赤、口渇、顔面紅潮
  • 心煩・易怒・不眠
  • 舌紅・苔黄または乾
  • 脈数・弦数または滑数

■ 養生の考え方

  • 辛い物・酒・油ものを控える
  • 深呼吸、運動、ストレス発散
  • 菊花・決明子・緑茶などの清熱飲食
  • 睡眠と休息を十分に取る

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