概念
昇挙（しょうきょ）とは、下陥した気を上昇させ、臓腑や器官の位置と機能を回復させる治法である。
主として中気下陥・気虚下陥・臓器下垂などに用いられ、脾気を補い、清陽の上昇を助けることを目的とする。
所属
主に補気法に属し、特に脾気虚弱・中気下陥を改善する際に用いられる。
また、昇清降濁の調整を図る治法として、脾胃機能の回復に重要な役割を果たす。
効能
- 下陥した気を引き上げ、臓器の位置を正す。
- 脾胃の昇清作用を回復し、消化吸収機能を高める。
- 中気を補い、倦怠感や無力感を改善する。
- 清陽を上昇させ、頭目の清明を助ける。
- 体内の気の流れを整え、虚弱体質を改善する。
主治
- 中気下陥：倦怠、息切れ、声の弱さ、下垂感。
- 内臓下垂：胃下垂、子宮下垂、脱肛。
- 久病虚弱：倦怠、立ちくらみ、気力低下。
- 清陽不昇：めまい、頭重、意識の鈍化。
- 慢性疲労・虚弱体質：元気が出ない、食欲不振。
病機
脾は「昇清」を主り、気の上昇を担う。
脾気が虚すると昇清の機能が失われ、気血が下陥し、臓腑下垂や脱肛などを生じる。
昇挙法は、補中益気・昇陽挙陥によって脾の運化と清陽上昇を回復させることを目的とする。
代表方剤
- 補中益気湯（ほちゅうえっきとう）：中気下陥、胃下垂、脱肛、倦怠無力。
- 升麻柴胡湯（しょうまさいことう）：脾気虚による清陽不昇、発熱後の倦怠。
- 黄耆建中湯（おうぎけんちゅうとう）：脾虚・中気不足に伴う体力低下。
- 参苓白朮散（じんれいびゃくじゅつさん）：脾虚湿困による食欲不振、倦怠。
臨床応用
- 慢性的な疲労感、集中力低下、気力不足。
- 胃下垂、子宮脱、脱肛などの下垂症。
- 脳貧血様症状、立ちくらみ、起立性低血圧。
- 声が弱い、息切れしやすい、倦怠感が強い。
- 長期の虚弱体質改善や体力回復期の補助療法。
使用上の注意
- 実熱証や上焦実火がある場合は使用を避ける。
- 体内に湿滞や痰濁が多い場合は、健脾化湿薬を併用する。
- 過度の昇挙薬は、頭痛やめまいを誘発することがある。
- 虚証であっても陰虚火旺の際は、滋陰薬を加減する。
まとめ
昇挙法は、下陥した気を上昇させ、脾胃の昇清機能を回復する治法である。
主として中気下陥・臓器下垂・倦怠虚弱などに用い、
代表方剤は補中益気湯・升麻柴胡湯・黄耆建中湯などがある。
脾気を補い、清陽を挙げることで、全身の気血運行と臓腑機能を正常化する。
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