五更泄瀉(ごこうせっしゃ)とは、毎朝の明け方(五更)に必ず発生する下痢を特徴とする症状で、東洋医学では主に脾腎陽虚によって起こるとされます。夜明け前は陽気が最も弱まり陰気が盛んな時間であり、この時に腎陽が不足すると温煦作用が低下し、大腸の運化が失調して下痢が生じます。
原因
- 腎陽虚: 生命活動を温める腎陽が不足し、腸の働きを温められない。
- 脾陽虚: 消化吸収を司る脾の陽気が弱く、運化機能が低下する。
- 寒湿の侵入: 冷飲・冷食・湿邪により脾腎の陽気がさらに損なわれる。
- 慢性疾患・虚労: 長期の体力低下により脾腎の陽気が虚する。
主な症状
- 明け方に必ず下痢する(五更時に発作性)
- 腹部の冷え・下腹部の鈍痛(温めると軽快)
- 日中は下痢しない/朝だけ症状が強い
- 便は水様・未消化物を含むことがある
- 倦怠感・四肢の冷え・小便清長
- 食欲不振、手足がだるい
舌・脈の所見
- 舌: 淡胖、湿潤、白苔(寒湿)
- 脈: 沈弱・遅、あるいは細弱
病理機転
- 腎陽が不足 → 下焦を温められず → 大腸の温煦不足 → 五更時に泄瀉。
- 脾陽虚による運化失常 → 水穀を消化・吸収できず下痢。
- 夜間は陰気が旺盛 → 陽虚者はさらに下痢を引き起こしやすい。
代表的な方剤
- 四神丸(ししんがん): 腎陽を温め、五更泄瀉の代表的処方。
- 附子理中湯(ぶしりちゅうとう): 脾腎陽虚が強い場合に使用。
- 真武湯(しんぶとう): 腎陽不足+寒湿停滞に。
- 人参湯: 脾陽虚による水様便に。
治法
- 温腎健脾: 腎陽を温め、脾の働きを強化する。
- 温中散寒: 寒邪を散じ、腹部を温める。
- 固腸止瀉: 腸の働きを整え、泄瀉を止める。
養生のポイント
- 冷食・冷飲・生ものを避ける。
- 腹部(特に下腹)を冷やさない。
- 温かく消化の良い食事(粥・スープなど)をとる。
- 過労・睡眠不足を避け、脾腎を損なわないようにする。
- 軽い散歩や温める習慣(腰・腹)で陽気を補助する。
まとめ
五更泄瀉は、明け方に必ず起こる下痢を特徴とし、主因は脾腎陽虚です。
治療の中心は温腎健脾・温中散寒・固腸止瀉となり、生活習慣では冷えを避け、脾腎を温めることが重要です。
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