寒瘀阻絡とは

■ 概念

寒瘀阻絡とは、寒邪の侵入や体内陽気不足により、気血の流れが阻滞し、経絡や臓腑に瘀血（血行停滞）が生じる状態を指します。
寒邪は血流を収縮させ、瘀血を生じやすくするため、疼痛・刺痛・固定痛・冷感などが慢性的に現れます。

■ 主な原因

• 外因の寒邪侵入： 冷風・冷湿・冷飲により経絡・臓腑に寒が停滞する
• 陽気虚弱： 体を温める力が不足し、寒邪を散じられず瘀血が発生
• 過労・慢性疾患： 正気虚弱で寒邪の影響を受けやすくなる
• 瘀血体質： 血行不良が先天的または後天的に存在する場合、寒邪で症状が増悪

■ 病理機転

• 寒邪侵入 → 血管収縮 → 血流停滞 → 瘀血形成
• 瘀血による経絡阻滞 → 疼痛・刺痛・圧痛
• 寒邪の影響で痛みは冷感・固定性を帯び、運動や温めることで軽快することもある

■ 主な症状

• 刺すような痛み、固定性の疼痛
• 疼痛部位の冷感、寒さで増強
• 慢性では硬結や腫塊を伴うこともある
• 動作や温めることで症状がやや改善
• 場合によっては血行不良による紫斑や瘀斑を伴う

■ 舌・脈の所見

• 舌： 紫暗または瘀斑、苔薄白
• 脈： 沈緊または弦細、時に結代

■ 代表的な方剤

• 温経湯：寒邪による血行阻滞・疼痛に
• 当帰四逆加呉茱萸生姜湯：手足の冷えや疼痛に
• 桂枝加桂湯：寒凝血滞による疼痛に
• 血府逐瘀湯：瘀血が顕著な場合の疼痛に

■ 治法

• 温経散寒： 寒邪を散じ、経絡の血流を改善
• 活血化瘀： 瘀血を除き、血行を促す
• 通絡止痛： 経絡を通じて疼痛を緩和する

■ 養生の考え方

• 冷え・湿気を避け、腰腹や手足を温める
• 過労や長時間の冷環境を避け、陽気を補う生活を心がける
• 温かい食事・生姜、桂皮など体を温める食材を摂る
• 軽い運動や温灸・入浴で血流改善

■ まとめ

寒瘀阻絡は、寒邪の侵入や陽気不足により気血の流れが阻滞し、経絡や臓腑に瘀血を生じる状態です。
治療の中心は温経散寒・活血化瘀・通絡止痛であり、生活では体を温め、冷えと血行不良を避けることが重要です。