■ 概念
煩躁不眠とは、精神が落ち着かずイライラや不安が強く、夜眠れない、または眠りが浅い状態を指す中医学の病証用語です。
心神の安定を保つ心陰・心血が不足したり、肝鬱や痰火が心を擾乱することで生じます。
■ 主な原因
- 心血・心陰不足: 長期の過労、慢性病、血液や陰液の消耗により心神が安定できない
- 肝鬱化火: 情志不調、ストレスや怒りが溜まり、肝火が心に上逆する
- 痰火擾心: 飲食の不節、痰湿内生が心を擾乱
- 外感熱邪: 高熱後の心神不安や煩躁不眠
■ 病理機転
- 心血・心陰不足 → 心神失養 → 不眠・多夢・煩躁
- 肝鬱化火 → 火熱上炎心神 → 心悸・イライラ・不眠
- 痰火擾心 → 痰湿が心を擾乱 → 眠りが浅く、多夢、寝ても疲れが取れない
■ 主な症状
- 入眠困難・熟眠できない
- 夜間に目が覚めやすい、多夢
- 日中の精神不安、イライラ、怒りっぽい
- 心悸、胸闷、手足のほてり感、口渇などを伴うこともある
- 慢性化すると記憶力低下、倦怠感、食欲不振など
■ 舌・脈の所見
- 舌: 紅、少苔、または黄膩苔(痰火の場合)
- 脈: 細数・弦・滑など、証により異なる
■ 代表的な方剤
- 酸棗仁湯:心血不足による不眠・多夢に
- 天王補心丹:心陰不足・虚火旺盛による煩躁不眠に
- 朱砂安神丸:肝火上炎・心悸・不眠に
- 温胆湯:痰火擾心による不眠・多夢・動悸に
■ 治法
■ 養生の考え方
- 夜更かしを避け、十分な睡眠を確保する
- ストレスや怒りを溜めず、適度に発散する
- 刺激性の飲食(辛味・カフェイン・アルコール)を控える
- 軽い運動や瞑想・呼吸法で心身を落ち着ける
- 陰血を養う食材(黒豆・百合・ナツメ・酸棗仁など)を摂る
■ まとめ
煩躁不眠は、心血・心陰不足や肝火上炎、痰火擾心などにより心神が安定できず、不眠・多夢・煩躁を呈する病証です。
治療の基本は養心安神・清肝泻火・化痰開竅であり、生活では睡眠を確保し、心身を落ち着け、陰血を養うことが重要です。
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