【概要】
健骨利節とは、骨を強健にし(健骨)、関節の動きを円滑にして疼痛・可動障害を改善する(利節)治法である。
骨・関節は腎により主られ、また気血によって滋養されるため、腎虚・気血不足・寒湿阻滞・瘀血停滞などにより骨節が失養すると、疼痛・変形・運動制限を生じる。
本法は加齢性変化、慢性関節疾患、虚弱体質、痺証の後期などに用いられ、骨格と関節機能の維持・回復を目的とする。
主な適応症状
- 関節の痛み・こわばり・可動域制限
- 腰膝酸軟、下肢無力
- 冷えや天候で悪化する関節痛
- 慢性化した痺れ・重だるさ
- 高齢者・虚弱者の関節不調
これらは骨節の失養、または経絡・関節部の通行不利を示す。
主な病機
- 腎虚:腎は骨を主る。腎精不足により骨が脆弱となり関節痛を生じる。
- 気血両虚:骨節が十分に滋養されず、無力感・鈍痛が現れる。
- 寒湿阻節:寒湿邪が関節に停滞し、重痛・屈伸不利を生じる。
- 瘀血停滞:慢性病変や外傷後に関節痛・変形を伴う。
治療は健骨を本とし、補腎・益気血・通絡・祛風湿を随証配合する。
主な配合法
代表的な方剤
- 独活寄生湯:補肝腎・祛風湿。慢性痺証の基本方。
- 六味地黄丸:腎陰虚による骨節の失養に応用。
- 八味地黄丸:腎陽虚・冷えを伴う関節痛。
- 大防風湯:虚実錯雑の関節痛・運動障害。
- 牛車腎気丸:下肢無力・しびれを伴う場合。
臨床でのポイント
- 急性炎症期は清熱・止痛を優先し、健骨は回復期に用いる。
- 高齢者では補腎を中心に長期的視点で治療する。
- 冷痛には温補、熱感には清熱を適宜配合。
- 運動療法・温灸・生活指導との併用が有効。
- 骨節の問題は短期改善を求めすぎない。
まとめ
健骨利節法は、骨を強化し、関節の機能と可動性を回復させることで慢性の疼痛や運動障害を改善する治法である。
腎虚・気血不足・寒湿・瘀血といった背景を正確に弁別し、補腎・益気血・通絡・祛風湿を適切に組み合わせることが重要である。
慢性痺証や加齢性関節疾患において、基盤治法となる重要な概念である。
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