瘀血停滞とは

瘀血停滞とは、血の運行が障害され、体内に停滞・鬱積した状態を指す中医学の病証です。
気血の流れが滞ることで、疼痛・腫塊・色調変化・月経異常など多彩な症状を引き起こします。
瘀血は「百病の源」ともいわれ、他の病証（気滞・寒凝・熱結・虚証）と併発しやすいのが特徴です。

主な原因

• 気滞： 情志鬱結や肝気鬱滞により血の推動力が低下する。
• 寒凝： 寒邪によって血脈が収縮し、血行が阻害される。
• 熱結： 熱邪により血が煮詰まり、粘稠化して流れにくくなる。
• 外傷・手術： 打撲・手術後の血行障害による瘀血形成。
• 久病・虚弱： 気虚により血を推動できず、瘀血が生じる。

病理機転

• 気機失調 → 血行不暢 → 瘀血が体内に停滞。
• 血行障害 → 経脈・臓腑の栄養失調。
• 瘀血が新血の生成を阻害し、病状が慢性化。

主な症状

• 刺すような痛み、固定性疼痛
• 患部の腫脹・硬結・圧痛
• 顔色暗紫、唇・爪の色が暗い
• 月経痛、月経血の暗色化・血塊（女性）
• 慢性疾患、痛みが長引く

舌・脈の所見

• 舌： 暗紅～紫暗、瘀点・瘀斑、舌下静脈怒張
• 脈： 渋脈、弦渋、または沈渋

関連する病証との鑑別

• 気滞： 張痛・移動性疼痛が主体、瘀血所見は軽い。
• 瘀血阻絡： しびれ・麻木・機能障害など絡脈症状が強い。
• 寒凝血瘀： 冷えで悪化し、温めると軽快。
• 熱瘀： 疼痛に灼熱感、口渇・便秘など熱症状を伴う。

代表的な方剤

• 桃核承気湯： 瘀血＋実熱・便秘を伴う場合。
• 桂枝茯苓丸： 婦人科系の瘀血停滞に。
• 血府逐瘀湯： 胸部・上焦の瘀血に。
• 少腹逐瘀湯： 下腹部・冷えを伴う瘀血に。

治法

• 活血化瘀： 停滞した血を除去し、血行を回復する。
• 行気止痛： 気を巡らせ、疼痛を軽減する。
• 温経散寒／清熱涼血： 寒・熱の偏りに応じて調整。

養生の考え方

• 冷えを避け、特に下腹部・腰部を温める。
• 長時間の座位・同一姿勢を避ける。
• 適度な運動で血流を促進。
• ストレスを溜めず、情志の安定を心がける。

まとめ

瘀血停滞は、血行障害によって疼痛・腫塊・慢性症状を引き起こす基本的な病証です。
治療の要は活血化瘀であり、同時に気滞・寒・熱・虚といった背景病機を見極めて調整することが重要です。
生活面では冷えと運動不足を避け、血流を妨げない習慣が回復を助けます。