癥瘕(ちょうか)とは、腹中に塊状物が形成され、脹満・疼痛を伴う病証の総称です。
中医学では「癥」と「瘕」に区別され、それぞれ性質や成因が異なります。
癥と瘕の違い
- 癥: 腹中の堅硬な腫塊で、押しても動かず、疼痛が固定する。主に瘀血による。
- 瘕: 腹中の腫塊が時に有り、時に消え、触れると移動しやすく、疼痛も移動性。気滞や痰湿が原因となる。
原因
- 気滞血瘀: 七情内傷や気機阻滞によって血行が悪化し、瘀血が形成。
- 寒邪凝滞: 寒邪が中焦に侵入し、血行を阻む。
- 痰湿停聚: 脾の運化失調により痰湿が内生し、腫塊を形成。
- 臓腑虚弱: 気血不足で正気が虚し、瘀血や痰濁が停留しやすくなる。
主な症状
- 腹部に堅硬または移動性の塊がある
- 脹痛(固定性または移動性)
- 経血異常(閉経、経血量の減少、塊血の排出など)
- 胸脇の張り、消化不良
- 長期化すると体重減少、倦怠感、顔色萎黄
舌・脈の所見
- 舌: 暗紫、または苔膩。
- 脈: 弦・渋、または細弱。
治療方針
- 活血化瘀: 瘀血を取り除く。
- 行気消積: 気滞を解消し、腫塊を散らす。
- 軟堅散結: 硬結を和らげる。
- 健脾化痰: 痰湿を取り除き、脾胃を健やかにする。
- 代表方剤:桂枝茯苓丸、大黄牡丹皮湯、逍遙散、化痰丸など。
養生・注意点
- 情志を調整し、ストレスを避ける。
- 寒冷・生冷の飲食を控え、血行を妨げない。
- 定期的な運動で気血の流れを促進。
- 婦人科疾患との関連が多いため、月経周期や体質を整えることが重要。
まとめ
癥瘕とは、腹中に塊が形成される病証であり、「癥」は瘀血主体の堅硬・固定性、「瘕」は気滞や痰湿主体の移動性を特徴とします。
治療は活血化瘀・行気消積を中心に、証に応じて痰湿や寒邪を除く方針が取られます。
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