当帰芍薬散加附子（とうきしゃくやくさんかぶし）

📘 基本情報

項目	内容
方剤名	当帰芍薬散加附子（とうきしゃくやくさんかぶし）
出典	『和剤局方』の当帰芍薬散に附子を加味した加味方
分類	補血温陽・利水調経剤
構成生薬	当帰（とうき）・芍薬（しゃくやく）・川芎（せんきゅう）・茯苓（ぶくりょう）・白朮（びゃくじゅつ）・附子（ぶし）
方名の由来	当帰芍薬散に「附子」を加えて、下焦の陽気を補い、冷えを一層温めることから名づけられた。

🧭 方意（効能と主治）

区分	内容
効能	補血調経・温陽利水
主治	血虚・冷え・水滞による下腹部の冷痛、腰痛、むくみ、頻尿、月経困難、冷え性など。 特に冷えが強く、四肢が冷える・腹部が冷たい場合に適する。
病機	当帰芍薬散証に陽虚（特に腎陽虚）を兼ね、寒湿が滞り、血行不良・利水障害を呈する状態。 寒によって血行が阻まれ、疼痛やむくみ、月経異常を引き起こす。

💊 構成生薬と作用

生薬	主な作用
当帰	補血活血・調経。血を養い、冷えによる疼痛を改善。
芍薬	養血柔肝・止痛。筋肉や内臓の緊張を和らげる。
川芎	活血行気。血流を促し、瘀血や冷えによる痛みを除く。
茯苓	利水滲湿・健脾。むくみや下半身の重だるさを改善。
白朮	健脾益気・燥湿。水滞の原因である脾虚を補う。
附子	回陽救逆・温経止痛。冷えを取り、下腹部の疼痛を和らげる。

🌡 臨床的特徴

観点	内容
症状の特徴	冷えが強く、下腹部・腰部・四肢が冷たく痛む。 むくみ、頻尿、月経痛、月経不順を伴う。 疲れやすく、顔色が白く、寒がりで手足が冷える。
体質傾向	陽虚（特に腎陽虚）傾向。 体力中等度以下で、慢性的な冷えやむくみを訴える人。
舌象・脈象	舌：淡、白苔、湿潤。 脈：沈細、遅。

🩺 現代医学的応用

• 月経困難症・月経不順
• 冷え性（特に下半身の冷え）
• 腰痛・下腹部痛（冷えで悪化）
• 浮腫・むくみ・頻尿
• 不妊症（冷え性体質の女性）
• 更年期障害・手足の冷感

⚖️ 類方・比較

方剤	特徴・鑑別点
当帰芍薬散	冷えや虚弱があるが、附子を加えるほどではない場合。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯	冷えがさらに強く、四肢厥冷・脈沈細などの重度の寒証。
真武湯	陽虚＋水滞が主で、悪寒・めまい・下痢などがある場合。

⚠️ 使用上の注意

• 熱感・のぼせがある場合は不適。
• 附子を含むため、過量使用や長期服用は避ける。
• 高齢者や虚弱者では医師の指導のもとで使用する。

📖 メモ（臨床要点）

• 当帰芍薬散証に「冷えが強く、痛みやむくみが増す」場合の加味方。
• 附子によって陽気を補い、寒による血行不良や疼痛を改善。
• 冷え性体質の婦人科系トラブルに非常に有用。
• 血虚＋陽虚＋水滞という三虚の同時改善を目的とする。