概念
利水調経(りすいちょうけい)とは、 体内の水湿をさばいて利水し、あわせて月経(衝任・気血の運行)を整える治法である。 主に水湿内停や水滞によって月経が乱れる証に用いられる。 水湿が中焦・下焦に停滞すると、気血の運行が阻まれ、 月経不順・経量異常・浮腫・めまい・頭重感などが現れる。
所属
利水滲湿法と調経法の併用に属する。
効能
- 利水消腫:体内の余分な水湿を除き、浮腫や下腹部の張りを軽減。
- 健脾化湿:脾の運化を助け、水湿の生成を防ぐ。
- 調経止痛:水滞による経絡の阻滞を解消し、月経痛を緩和。
- 疏通気血:衝任脈の流れを通じて月経を正常化する。
主治
- 水湿阻滞型の月経不順:経期の遅れ、経量減少または経閉。
- 経行浮腫:月経前または経期中に顔や下肢が浮腫する。
- 水滞血瘀型痛経:下腹部の冷痛・重だるさ・経血塊を伴う。
- 月経に伴う頭重・めまい・胸悶:痰湿上擾による症状。
病機
脾虚・腎虚・陽気不足により水液代謝が低下すると、水湿が内停し、 衝任脈や経絡の流通を阻む。これにより、気血運行が妨げられ月経異常を起こす。 利水調経法は脾腎を健やかにし水湿を除くことで、気血の運行と月経を回復させる。
代表方剤
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):血虚と水滞を同時に治し、月経不順・浮腫を改善。
- 猪苓湯(ちょれいとう):水滞・尿利不利・浮腫を伴う月経異常に。
- 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう):脾陽虚による水湿停滞・頭重・めまいを伴う証。
- 五苓散(ごれいさん):水湿内停による月経不順や経行浮腫に応用。
- 当帰芍薬散+五苓散:水滞と血虚が並存する月経異常に良効。
応用
- 月経不順・過少月経・経閉
- 月経前浮腫・経行浮腫
- 水滞血瘀型痛経・下腹部膨満
- 更年期の水腫傾向・めまい・倦怠
使用上の注意
- 陰虚や血虚が著しい場合は、過度な利水は避ける。
- 寒湿が強いときは温陽薬を併用し、温陽利水とする。
- 熱湿を伴う場合は清熱利湿薬を配合する。
まとめ
利水調経法は、水湿の停滞によって月経の運行が阻まれる証に用いる。 脾腎を健やかにし、余分な水湿を除くことで気血を調え、 「利水化湿・調経止痛」を実現する。 代表方剤は当帰芍薬散・五苓散・猪苓湯である。
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